
この記事の監修者
青山北町法律事務所 代表弁護士
松本 理平(まつもと りへい)
消費者詐欺分野で長年、詐欺業者と対峙をしてきました。消費者詐欺分野の類型や手口に精通しています。詐欺業者のウィークポイントや実態にも詳しく切り込みます。その他、全国ネットでのテレビなどコメンテーター等にてメディア露出多数
- スマホ1台で在宅副業
- コピペするだけで月5万円
- スキル不要ですぐに始められる
副業を探している中でこうした言葉を目にし、気になって登録してみた。
気づけば数万円・数十万円の商材を購入していた。
しかし手元に残ったのは、薄いPDFと途絶えたサポートだけだった。
あるいは、「話を聞いてあげるだけで報酬がもらえる副業があります」というメッセージが届き、やりとりを続けるうちに「ポイント購入」「登録料」として気づかないままお金を払い続けていた。
どちらも、被害者の間で「副業詐欺」と呼ばれるトラブルです。
しかし、この2つはまったく異なる構造を持つ詐欺であり、返金のためのアプローチも異なります。
まず自分の被害がどちらの類型に当てはまるかを把握することが、解決への第一歩になります。
「副業で稼ごうとしていただけなのに」という悔しさは正当です。そして、そのお金はまだ諦める必要はありません。
この記事では、「副業詐欺」という言葉が指す2つの類型を整理したうえで、それぞれの手口・被害事例・返金の法的根拠・相談先の選び方まで、弁護士の視点からわかりやすく解説します。
「自分が遭ったのは副業詐欺なのか」という疑問の段階でも、「すでに被害は確信しているが返金できるかわからない」という段階でも、この記事が次の一歩を踏み出すための手がかりになれば幸いです。
目次
「副業詐欺」とは何か
「副業詐欺」という言葉は、法律用語でも行政用語でもありません。
被害に遭った人々が「副業を探していたら詐欺に遭った」という経験を共有するなかで自然発生的に広まった言葉であり、現在では2つの異なる詐欺の類型を指す言葉として使われています。
相談窓口や検索サイトで「副業詐欺」と調べても情報が錯綜しやすいのは、この2つの類型が混在しているからです。
まずここで整理しておくことが、自分の被害の正確な把握と、適切な対処への近道になります。
副業詐欺という言葉が生まれた背景
「副業詐欺」という言葉が広く使われるようになったのは、2010年代後半の副業ブームと軌を一にしています。
2018年、厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、政府主導で副業解禁の流れが加速しました。
大手企業が相次いで副業を解禁し、「本業以外の収入を持つこと」が社会的に推奨される空気が生まれました。
さらに2020年以降のコロナ禍では、外出自粛・収入減少を背景に「在宅で稼げる副業」への関心が爆発的に高まりました。
情報商材詐欺の業者はこの流れを見逃しませんでした。
それまで「ネットビジネス」「アフィリエイト」「FX必勝法」といったキーワードで集客していた業者が、「副業」というキーワードに切り替えることで、より広い層の見込み客にリーチできるようになったのです。
「副業詐欺」という言葉は、被害者側から生まれた言葉です。
業者が「副業」を名乗り、被害者が「副業詐欺に遭った」と呼んだことで定着しました。
その意味では、情報商材詐欺の一形態であり、「副業」というフックで集客するようになった時代の変化を反映した呼称といえます。
理解を深めたい
「情報商材詐欺」の全体像や、より詳しい歴史的背景については、こちらの記事で網羅的に解説しています。あわせてご参照ください。

【類型①】情報商材型副業詐欺
「副業詐欺」と検索してこの記事に辿り着いた方の多くは、この類型の被害者または被害の疑いがある方です。
情報商材型副業詐欺とは、「副業で稼ぐ方法」「在宅ワークのノウハウ」「自動で収益を生むシステム」といった情報・ツール・コンサルティングサービスを販売する詐欺的商法です。
SNS広告・YouTube・LINEを主な集客経路とし、無料の入口から高額商材へと段階的に誘導する構造(フロントエンド→バックエンド)を持っています。
- この類型の主な特徴は
- 「スマホ1台でOK」「コピペするだけ」「スキル不要」という敷居の低さを訴求する
- 購入前の説明と、実際に届いた商材の内容が大きく乖離している
- 返金を申し出ると「契約書に返金不可と明記」と主張し、その後連絡が途絶える
- 一度の支払いで終わらず、「次のステップ」として追加課金が続く
この類型については、「情報商材型副業詐欺のよくある手口」以降で手口・被害事例・返金根拠を詳しく解説します。
【類型②】出会い系サイト変形型副業詐欺|「会話する副業」の正体
情報商材型とはまったく異なる文脈で「副業詐欺」と呼ばれるのが、悪質な出会い系サイト・マッチングサービスが「副業」という名目に姿を変えた類型です。
- 孤独な未亡人の話し相手になるだけで報酬がもらえます
- 芸能人・著名人のメッセージに返信するお仕事です
- チャットレディとして在宅でできる副業です
こうした形で勧誘され、やりとりを続けるうちに
- ポイント購入
- メッセージ送信料
- プレミアム会員登録
という名目で課金を続けさせられる手口です。
「副業として働いている」という認識のまま被害が積み重なるため、気づいた時には数十万円に上っているケースも少なくありません。この類型については、「出会い系サイト変形型副業詐欺」で詳しく解説します。
どちらの類型でも「返金できる可能性がある」という共通点
2つの類型は構造が異なりますが、返金を求めるための法的根拠には共通点があります。
情報商材型では、勧誘時の誇大表現・断定的判断の提供・不安を煽るクロージングが消費者契約法上の問題となります。
出会い系変形型では、「副業である」という虚偽の説明・実際には存在しない相手との会話への課金誘導が、同様に消費者契約法上の不実告知等に該当し得ます。
「副業のつもりで払ったお金」も「商材購入で払ったお金」も、返金を求める法的根拠は存在します。
「自分で払った」「契約書に返金不可と書いてある」という理由だけで諦める必要はありません。
「副業詐欺」には情報商材型と出会い系変形型の2つの文脈があります。どちらの類型であっても、勧誘・販売のプロセスに問題があれば、消費者契約法・特定商取引法などの法律によって返金を請求できる可能性があります。まず自分の被害がどちらの類型に当てはまるかを確認することが、解決への第一歩です。
情報商材型副業詐欺のよくある手口|5つのパターン
情報商材型副業詐欺の手口は、「副業」というキーワードをフックにしている点で共通していますが、見た目のジャンルや訴求の切り口は多様です。
「自分が遭ったのはどのパターンか」を確認しながら読み進めてください。
なお、各パターンに共通する
- 「フロントエンドからバックエンドへの誘導構造」
- 「LINEを使ったクロージングの手口」
については、手口の詳細記事で体系的に解説しています。
このセクションでは、副業という文脈に特化した各パターンの特徴と、法的に問題となるポイントに絞って解説します。
コピペ・スマホ作業系(「スマホ1台でOK」「コピペするだけ」)
副業詐欺の中で最も相談件数が多く、被害が広範囲に及ぶパターンです。
「特別なスキルも経験も不要」「スマホ1台あれば今日から始められる」という敷居の低さを訴求し、幅広い年代・属性の見込み客を集めます。
購入前の説明では
- 「コピペするだけで報酬が発生する仕組みがある」
- 「作業手順を教えるので誰でも再現できる」
という具体的なイメージを与えます。
しかし実際に届く商材の内容は、「SNSに投稿する」「アフィリエイトリンクを貼る」といった極めて一般的な情報か、「次のステップに進むには上位プランが必要」という追加課金への案内がほとんどです。
初期費用・登録料型(「登録するだけで稼げる」「無料モニター募集」)
「登録するだけで案件が届く」「無料モニターとして参加するだけで報酬がもらえる」という訴求で集客し、登録・参加の段階で「初期費用」「登録料」「保証金」といった名目の支払いを求めるパターンです。
「無料」という入口で警戒心を下げておきながら、
実際に参加しようとすると「システム利用料として〇万円が必要」「保証金として預けてもらえれば返金します」という形で費用を請求されます。
支払った後は、約束された案件が届かないか、届いても報酬が発生しない仕組みになっています。
せどり・転売塾系(「Amazon転売で月20万円」「仕入れルートを教えます」)
「Amazonせどりで月収20万円を達成しました」「仕入れルートさえ知っていれば誰でも稼げます」という実績訴求で高額な塾・コンサルへの入会を促すパターンです。
副業ブームの初期から存在する手口ですが、現在も形を変えながら被害が続いています。
入会後に提供される「仕入れルート」は、実際には誰でもアクセスできる情報か、すでに競合が飽和した市場の情報であることが多く、「教わった通りにやっても説明を受けた通りには稼げない」という結果になります。
さらに「もっと稼ぐためには上位コースへ」という追加課金への誘導が続くケースが典型的です。
「この仕入れルートを使えば確実に稼げる」「月収20万円は現実的な目標です」といった断定的な表現で入会を促した場合、消費者契約法上の「断定的判断の提供」に該当します。
また、塾・コンサルへの勧誘がセミナーや電話で行われた場合、特定商取引法上のクーリングオフが適用できるケースがあります。
ライティング・アンケート系(「スキル不要で在宅ワーク」「アンケートに答えるだけ」)
- 「文章を書くだけ」
- 「アンケートに答えるだけで報酬がもらえる」
という極めてハードルの低い作業を訴求し、登録・教材購入へ誘導するパターンです。
特に副業経験のない主婦・シニア層に多く見られます。
「在宅でできる」「スキル不要」という点は事実であっても、実際に得られる報酬は極めて少額か、まったく発生しないケースがほとんどです。
登録後に「より高単価の案件を受けるには認定講座の受講が必要」という形で数万円〜数十万円の教材購入へ誘導されるパターンも多く見られます。
SNS運用・動画編集スクール系(「需要急増中のスキルを教えます」「案件紹介まで保証」)
- 「SNS運用や動画編集のスキルは今が旬」
- 「学んだ後の案件紹介までサポートします」
という訴求で、高額なオンラインスクールや講座への入会を促すパターンです。
近年急増している手口で、特に20〜30代の若い世代に被害が集中しています。
「スキルを身につければ自由な働き方ができる」という訴求自体は正当なビジネスにも見られますが、詐欺的なスクールでは、教材の質が著しく低い・約束された案件紹介が実施されない・サポートが名ばかりで機能しない、という実態が多く確認されています。
また、受講料を分割払いさせるためにキャッシングやローンを組ませ、気づいた時には借金だけが残っているというケースも報告されています。
弁護士からのアドバイス!
「コピペ副業」「せどり塾」「動画編集スクール」
名前とジャンルは変わっても、被害の構造はどれも同じです。
「副業で稼げると説明して高額商材を販売したが、説明内容と実態が大きく乖離していた」という点において、使える法的根拠は共通しています。
「新しい手口だから返金できない」「スクール系だから仕方ない」ということはありません。
どのパターンに当てはまっていても、勧誘・販売のプロセスに問題があれば返金を請求できる可能性があります。まず専門家に状況を確認してもらうことから始めてください。
出会い系サイト変形型副業詐欺|「会話する副業」の正体
- 「話し相手になるだけでお金がもらえる」
- 「メッセージを返信するだけの簡単なお仕事です」
一見すると在宅でできる気軽な副業に見えるこの誘いは、悪質な出会い系サイト・サクラサイトが「副業」という名目に姿を変えた詐欺です。
情報商材型副業詐欺とは構造がまったく異なりますが、被害者の間では同じく「副業詐欺に遭った」という言葉で語られます。
このセクションでは、この類型の手口・被害構造・返金の根拠を簡潔に整理します。
「会話する副業」の典型的な流れ
この類型の被害は、以下のような流れで進むことが多く見られます。
- 【STEP1】副業紹介サイト・SNSからの勧誘
- 「孤独な未亡人の話し相手をするだけで1件あたり〇円の報酬がもらえます」
- 「著名人・芸能人のメッセージに返信するお仕事です」
- 「チャットレディとして在宅でできる副業を紹介します」
という形で、副業紹介サイトやSNSのDMから接触してきます。
「副業」「在宅ワーク」「簡単」というキーワードで検索している人をターゲットにしており、一見すると正当な仕事の案内に見えます。
- 【STEP2】サイトへの登録・やりとりの開始
紹介されたサイトに登録すると、「クライアント」として紹介された相手(実際にはサクラ・ボット)からメッセージが届き始めます。最初はごく自然な会話が続き、「報酬が発生している」という感覚を持たせます。
- 【STEP3】課金への誘導
やりとりが進むと、
- 「もっとメッセージを送りたいのですが、ポイントが必要です」
- 「あなたに大切な話があるので、有料のメッセージを受け取ってください」
という形で、ポイント購入・メッセージ送受信料・プレミアム会員登録などの課金を促されます。
「課金しないと報酬が受け取れない」「もう少しで大きな報酬が発生する」という言葉で継続的な課金を続けさせます。
- 【STEP4】出金・報酬受け取りへの妨害
- 「報酬を受け取るには一定のポイントが必要」
- 「出金手数料として〇円が必要」
という形で、実際には報酬が受け取れない仕組みになっています。
「副業として働いている」という認識のまま課金を続け、気づいた時には数十万円を支払っていた、というケースが典型的です。
この類型で返金を求めるための根拠
出会い系変形型副業詐欺においても、返金を求めるための法的根拠は存在します。
「副業として報酬が得られる」という説明が事実と異なる場合、消費者契約法上の「不実告知」に該当し得ます。
また、サクラ・ボットとのやりとりに課金させていた場合、実在しない相手との会話に対して対価を支払わせたという事実が、詐欺取消し(民法96条)の根拠となる可能性があります。
【被害例】「話を聞いてあげるだけの副業のはずが」|50代・女性・主婦
子育てが一段落し、在宅でできる副業を探していたDさん。
SNSで「孤独な方の話し相手をするだけで報酬がもらえる在宅副業」という投稿を見つけ、紹介されたサイトに登録しました。
登録直後から「寂しくて誰かと話したい」というメッセージが届き始め、相手の話を聞くうちに親近感が生まれました。
しばらくすると「もっとメッセージを送りたいのでポイントを使わせてください」という依頼が届き、「相手のためになるなら」と数千円分のポイントを購入。
これが繰り返されるうちに、気づけば累計50万円以上を支払っていました。
「報酬はいつ受け取れますか」と問い合わせると、「あと少しポイントが必要です」という返答が続き、やがてサイト自体にアクセスできなくなりました。
弁護士からのアドバイス!
「出会い系サイトを使っていたわけではない」「副業のつもりで登録した」という状況でも、実態がサクラを使った詐欺的課金であれば、返金を求める法的根拠は存在します。
この類型の被害では、「恥ずかしくて相談できない」「自分も悪かったのでは」という気持ちから、一人で抱え込むケースが多く見られます。しかし、あなたは「副業」として正当な仕事だと信じて登録・課金していたのであり、その判断を責める必要はまったくありません。
支払いに使ったクレジットカードの明細や銀行振込の履歴・サイトとのやりとりのスクリーンショット・登録時の説明文などを保全したうえで、専門家に相談してください。
「話しにくい内容だから」と躊躇わず、まず現状を伝えることが解決への第一歩です。
副業詐欺の被害事例
- 「自分だけが騙されたのだろうか」
- 「なぜあのとき信じてしまったのか」
副業詐欺の被害に遭った方の多くが、こうした自責の感情を抱えています。
しかし実際には、副業詐欺の被害は特定の属性や年代に限らず、幅広い層に広がっています。
ここでは、情報商材型副業詐欺の典型的な被害パターンに基づいた2つの架空事例を紹介します。
「自分のケースと似ている」と感じた方は、同じような法的根拠で返金を請求できる可能性があります。
※このページに掲載している被害事例は、当事務所に寄せられた実際の相談をもとに再構成したものです。プライバシー保護の観点から、氏名・年齢・職業・金額等の詳細は変更しています。実在の特定の人物・団体を示すものではありません。また、掲載事例はあくまで一般的な傾向を示すものであり、個別の事案における法的判断は状況によって異なります。具体的なご事情については、専門家へのご相談をお勧めします。
【被害事例①】「副業を始めたかっただけなのに、気づけば38万円」|20代・女性・会社員
社会人2年目のEさんは、将来への漠然とした不安から副業に興味を持ち始めました。
Instagramのリール広告で「スマホで完結・スキル不要・スキマ時間でOK」という投稿を見かけ、プロフィールのリンクからLINEを登録しました。
登録後、数日間にわたって「副業で月5万円を達成するためのステップ」という内容のメッセージが自動配信されてきました。「なるほど」と思える内容もあり、「この人の話は信頼できる」という感覚が育っていきました。
1週間後、「Eさんのような方にこそ、次のステップをお伝えしたい」という個別メッセージが届き、オンライン説明会への参加を勧められました。
説明会では「この方法で実践した方が続々と月5万円・10万円を達成しています」「やり方さえ知れば、誰でも3ヶ月以内に結果が出ます」という説明を受けました。
「今月末までの特別価格です。次回はこの金額では提供できません」という言葉に背中を押され、38万円のコンサルプランをクレジットカードで決済しました。
しかし届いたのは数十ページのPDFと、月2回・各30分のZoom面談のみ。
PDFの内容は説明会で聞いた話とほぼ同じで、具体的な手法は「次のステージへ進むことでお伝えできます」と追加課金を促す内容でした。
Zoom面談も「まずはこの作業を続けてみてください」の繰り返しで、3ヶ月たっても収益はゼロ。
返金を申し出ると「契約書に返金不可と明記されています」と返答され、その後は既読無視が続きました。
この事例のポイント!
「3ヶ月以内に結果が出ます」「やり方さえ知れば誰でも達成できます」という説明は、消費者契約法上の「断定的判断の提供」に該当する可能性があります。
また「今月末までの特別価格」という緊急性の演出は「困惑類型」の根拠になり得ます。クレジットカード払いのため、チャージバック申請と並行して消費者契約法に基づく取り消し請求を進めることで、返金の可能性があります。
購入前の説明会の内容・LINEトーク履歴・販売ページのスクリーンショットが重要な証拠になります。
【被害事例②】「せどり塾で120万円。借金だけが残った」|40代・男性・自営業
コロナ禍で売上が激減し、新たな収入源を求めていたFさん。
YouTubeで「Amazonせどりで月収20万円を達成するまでの全記録」という動画を見て、紹介されていた無料セミナーに参加しました。
セミナーでは
- 「仕入れルートさえ知っていれば、在庫リスクなしで稼げる」
- 「私のクライアントで月収10万円を達成できなかった人は一人もいません」
という説明を受けました。
講師の実績として「月商500万円超」のスクリーンショットが示され、「この人は本物だ」と確信しました。
セミナー後の個別面談で「Fさんのような行動力のある方なら、必ず結果が出ます」「今なら分割払いで始められます」と勧められ、120万円のマスタープログラムに申し込みました。
支払いは信販会社のローンを組む形で、月々の分割払いになりました。
しかし提供された「仕入れルート」は、誰でもアクセスできる卸売サイトの情報のみ。
「競合が多くて利益が出ない」とサポートに相談しても「リサーチの仕方を工夫してください」という返答が繰り返されるだけでした。
6ヶ月後、サポートサイトにアクセスできなくなり、講師のSNSアカウントも削除されていました。ローンの残債だけが残り、相談に訪れました。
この事例のポイント!
「月収10万円を達成できなかった人は一人もいない」という表現は、消費者契約法上の「断定的判断の提供」および「不実告知」に該当する可能性があります。
また、ローン(信販契約)が絡む場合、割賦販売法に基づく「抗弁権の接続」を活用することで、信販会社に対してもローンの支払い停止・返金を求めることができる場合があります。
セミナーでの説明内容・個別面談でのやりとり・販売ページのスクリーンショットが返金請求の重要な証拠となります。
法令解説
割賦販売法・抗弁権の接続
情報商材やスクールの受講料をローン・クレジット払いにした場合、割賦販売法に基づく「抗弁権の接続」という制度を活用できる場合があります。
これは、販売業者に対して主張できる事由(契約の取り消し・解除など)を、信販会社に対しても主張できるという制度です。
購入者又は役務の提供を受ける者は、第二条第三項第一号に規定する包括信用購入あつせんに係る購入又は受領の方法により購入した商品若しくは指定権利又は受領する役務に係る第三十条の二の三第一項第二号の支払分の支払の請求を受けたときは、当該商品若しくは当該指定権利の販売につきそれを販売した包括信用購入あつせん関係販売業者又は当該役務の提供につきそれを提供する包括信用購入あつせん関係役務提供事業者に対して生じている事由をもつて、当該支払の請求をする包括信用購入あつせん業者に対抗することができる。
消費者契約法第四条3項
ローンを組まされて高額商材を購入した場合でも、販売業者が消えてしまった後であっても、信販会社への支払い停止・返金を求められる可能性があります。
「ローンを組んでしまったから諦めるしかない」ということはありません。
【被害事例③】「動画編集スクールで80万円。案件紹介は一度もなかった」|30代・男性・会社員
「将来的にフリーランスとして独立したい」という夢を持っていたGさん。
副業としてスキルを身につけようとYouTubeで情報収集していたところ、「動画編集は今が参入のチャンス」「未経験から3ヶ月で月収10万円を達成した受講生が続出」という広告動画が表示されました。
無料の説明会に参加すると、
- 「動画編集市場は今後も拡大が続く」
- 「当スクールは受講後の案件紹介まで一貫してサポートします」
- 「卒業生の就業率は95%超です」
という説明を受けました。実際に案件を獲得したという卒業生が画面に登場し、「スクールのサポートがなければここまで来られなかった」と語る場面もありました。
説明会後の個別面談で「Gさんには十分なポテンシャルがあります」「今月中に申し込めば受講料を10万円割引できます」と勧められ、80万円のプレミアムコースに申し込みました。
支払いはクレジットカードの分割払いを勧められ、そのまま決済しました。
受講を開始すると、教材は市販の書籍や無料のYouTube動画と大差ない内容で、質問への返答は数日〜1週間かかることも珍しくありませんでした。
3ヶ月の受講期間が終了すると「案件をご紹介します」という連絡を待ち続けましたが、一向に届きません。
問い合わせると「現在マッチングできる案件がございません」という返答が続き、半年後にはサポート窓口自体がなくなっていました。
この事例のポイント!
「案件紹介まで一貫してサポートします」「卒業生の就業率95%超」という説明が事実と異なっていた場合、消費者契約法上の「不実告知」および民法上の「債務不履行」(約束した案件紹介が履行されていない)を根拠とした返金請求が可能です。
また、クレジットカードの分割払いが絡む場合、割賦販売法に基づく「抗弁権の接続」を活用して、カード会社への支払い停止・返金を求めることができる可能性があります。
説明会での説明内容・個別面談でのやりとり・スクールのウェブサイトに掲載されていた「就業率95%超」などの表記のスクリーンショットが、重要な証拠になります。
押さえておこう!
「騙された自分が悪い」は間違いです。
2つの事例に登場するEさん・Fさんは、どちらも「副業で稼ぎたい」という至極まっとうな動機から行動しています。
その自然な動機を利用して、段階的に信頼を構築し、冷静な判断ができない状況を作り出して高額契約を結ばせる。
これが副業詐欺の本質です。
「なぜあのとき断れなかったのか」と自分を責める必要はありません。
断れなかったのではなく、断れないように設計された状況に置かれていたのです。その「設計」の違法性こそが、返金を請求するための根拠になります。
副業詐欺に遭ったら|まず確認すること
「やはりこれは詐欺だったのか」と気づいた瞬間、頭の中が真っ白になる方は少なくありません。
- 「すぐに業者に怒りをぶつけたい」
- 「警察に行くべきか」
- 「証拠を集めなければ」
さまざまな考えが交錯し、何から手をつければいいかわからなくなります。
しかしこの最初の行動の選択が、返金できる金額と可能性を大きく左右します。
焦る気持ちをいったん抑えて、このセクションで紹介する順番通りに動くことが、結果として最短ルートになります。
【副業詐欺版】被害チェックリスト
まず、以下の項目を確認してください。
複数当てはまる場合、返金請求を検討できる可能性があります。
勧誘・販売のプロセスについてのチェックリスト
- 「必ず稼げる」「確実に結果が出る」「失敗した人は一人もいない」など、収益を断言するような説明があった
- 「今月末まで」「残り〇名」「このLINEを閉じたら終わり」など、急かされた状態で契約した
- 「このままでは何も変わらない」「副業を始めないと将来が不安」など、不安を強調する言葉で背中を押された
- 無料の説明会・セミナー・個別面談を経て、その場または直後に高額契約を結んだ
- 「案件紹介まで保証」「サポートが充実」という説明があったが、実際には提供されなかった
契約・決済の状況についてのチェックリスト
- 購入前の説明内容と、実際に届いた商材・サービスの内容が大きく異なっていた
- 契約書または利用規約に「返金不可」と記載されている
- クレジットカード・信販ローン・銀行振込のいずれかで支払いをした
- 無料の説明会・セミナー・個別面談を経て、その場または直後に高額契約を結んだ
- 返金を申し出たところ、無視・拒否・連絡途絶のいずれかがあった
- 業者のサイト・SNSアカウントが突然閉鎖・削除された
チェック項目に複数当てはまっていても、「自分で決めた」「契約書に返金不可と書いてある」という理由で諦める必要はありません。勧誘・販売のプロセスに法的な問題があれば、契約書の文言にかかわらず返金を請求できる可能性があります。
絶対に保全すべき証拠の種類
返金請求において、証拠の保全は最優先事項です。
業者への連絡や返金の申し出よりも、必ず証拠の保全を先に行ってください。
業者は返金要求や法的手続きの気配を察知すると、即座にサイトを閉鎖しアカウントを削除します。
気づいた時点でのスピードが、取り戻せる金額を左右します。
副業詐欺で特に重要な証拠
- 勧誘のきっかけとなったSNS広告・投稿・DMのスクリーンショット
- 購入前の販売ページ・ランディングページ(「必ず稼げる」「案件紹介保証」などの文言が含まれるページ)
- 購入前後のLINEトーク全履歴(勧誘・クロージング・返金申し出への対応を含む)
- セミナー・説明会・個別面談での説明内容(録音・録画・メモ・資料)
- 契約書・利用規約・申込確認メール
- 決済明細・クレジットカード利用明細・銀行振込明細・ローン契約書
- 実際に届いた商材・納品物(PDFのスクリーンショット・動画URLなど)
- 返金申し出に対する業者の返答・連絡途絶の記録
証拠はクラウドストレージ(GoogleドライブやiCloudなど)にもバックアップを取り、端末の故障や誤削除に備えてください。
「これは証拠になるのか?」と迷ったものはすべて保存しておくというスタンスが重要です。
やってはいけない「NG行動」3つ
被害に気づいた直後の焦りや怒りから、かえって状況を悪化させてしまう行動があります。
以下の3点は特に注意が必要です。
- 【NG①】感情的な状態で業者に直接連絡する
- 「詐欺師」「訴える」といった感情的な言葉でのメッセージや電話は、業者に警戒させ、連絡を途絶えさせるきっかけになります。
また、「感情的なクレーマー」として対応を硬化させる口実を与えることにもなります。
業者への連絡は、内容・タイミング・方法を弁護士と相談したうえで、内容証明郵便などの法的に有効な形で行うのが理想的です。 - 【NG②】LINEトーク・メール・契約書類を削除する
- 「見るのがつらい」「もう関わりたくない」という気持ちから、やりとりの記録を消してしまうケースがあります。
しかしこれらはすべて、返金請求の重要な証拠です。
感情的につらい場合は、フォルダに整理して「見えないようにする」という対処にとどめ、削除は絶対に行わないでください。 - 【NG③】業者の「和解案」にすぐ応じる
- 返金を申し出たとき、業者から「今なら〇万円だけ返金します」という提案が届くことがあります。
しかしこの金額が、法的に請求できる全額を大幅に下回っているケースが多く、和解に応じてしまうと残りの請求権を失う可能性があります。
業者からの提案には、弁護士への相談前に応じないことを強くお勧めします。
弁護士からのアドバイス!
副業詐欺の被害回復において、特に注意していただきたいのが「証拠保全と業者への連絡の順番」です。
多くの方が「まず業者に返金を求めよう」と考えますが、返金を求めた瞬間に業者がサイトを閉鎖し、LINEをブロックし、資金を移動させるケースは実務上非常に多く見られます。
返金申し出の前に販売ページのスクリーンショットを撮っておけば取れた証拠が、申し出の翌日にはサイトごと消えていた。
そういう事態は決して珍しくありません。
「騙されたとわかった今この瞬間」に、まず証拠の保全を済ませてください。
業者への連絡は、その後に弁護士と相談しながら進める方が、返金できる金額と可能性を最大化できます。
副業詐欺は返金できる?法的根拠と決済手段別のアプローチ
- 「契約書に返金不可と書いてある」
- 「自分で決済ボタンを押した」
- 「時間が経ってしまった」
副業詐欺の被害者が返金を諦める理由として、最もよく聞かれる言葉です。
しかしこれらはいずれも、返金を諦める根拠にはなりません。
副業詐欺における返金請求の根拠となる法律・制度は複数存在し、状況に応じて組み合わせることができます。
また、支払い方法によってアプローチが異なります。
このセクションでは、返金の法的根拠と決済手段別の対応を整理します。
返金を求めるための主な法的根拠
返金請求の根拠となる法律・制度は一つではありません。
状況に応じて複数の根拠を組み合わせることで、返金の可能性を最大化できます。
①消費者契約法による契約の取り消し
副業詐欺の返金請求において、最も広く活用できる根拠です。
以下のいずれかに該当する勧誘があった場合、契約を取り消すことができます。
- 不実告知(消費者契約法第4条1項1号)
- 「案件紹介まで保証します」「卒業生の就業率95%超」「この方法で失敗した人は一人もいません」など、事実と異なる説明で契約させた場合に該当します。
- 断定的判断の提供(消費者契約法第4条1項2号)
- 「必ず稼げます」「3ヶ月で月収10万円は確実です」など、将来の不確実な収益について断言した場合に該当します。
- 困惑類型(消費者契約法第4条3項)
- 「今月末までの特別価格」「このLINEを閉じたら二度と案内できない」「このままでは何も変わらない」など、不安を煽り冷静な判断を奪った場合に該当します。
取り消しができる期間は、追認できる時(気づいた時)から1年、契約時から5年です。契約から時間が経っていても、すぐに諦める必要はありません。
②特定商取引法によるクーリングオフ
副業商材の勧誘がセミナー・個別面談・電話で行われた場合、「電話勧誘販売」または「特定継続的役務提供」に該当し、契約書面を受け取った日から8日間のクーリングオフが適用される可能性があります。
また「紹介すれば報酬が得られる」「会員を増やすことで収益が生まれる」という仕組みが組み込まれていた場合は、連鎖販売取引(マルチ商法)に該当し、20日間のクーリングオフが認められます。
- 「業者からクーリングオフの対象外と言われた」
- 「クーリングオフ期間はすでに過ぎている」
という場合でも、消費者契約法による取り消しという別の根拠が残っています。
業者の主張をそのまま受け入れる必要はありません。
③債務不履行による解除・損害賠償(民法415条)
- 「案件紹介まで保証します」
- 「個別サポートを提供します」
という約束が履行されなかった場合、民法415条に基づく債務不履行を根拠に契約解除と損害賠償を請求できます。
副業スクール・コンサル系の被害で特に有効な根拠です。
④詐欺取消し・錯誤取消し(民法)
業者に「騙す意図」があったと認められる場合、民法96条による詐欺取消しが可能です。
また、重要な事項について誤解があって契約した場合は、民法95条による錯誤取消しも検討できます。
消費者契約法との組み合わせで主張されることが多い根拠です。
法令解説
消費者契約法 第4条
消費者契約法第4条は、事業者が消費者に対して不当な勧誘行為を行い、消費者が誤認または困惑して契約した場合に、その意思表示を取り消すことができると定めています。
副業詐欺において最も広く活用できる根拠です。
消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一 重要事項について事実と異なることを告げること。
二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価値、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。
消費者契約法第四条
決済手段別のアプローチ
支払い方法によって、取れる返金手段が大きく異なります。
ご自身の決済手段を確認しながら読み進めてください。
クレジットカード払い・分割払いの場合
クレジットカード払いの場合、2つのアプローチを同時並行で進めることが有効です。
- ①チャージバック申請
カード会社に対して「説明と異なる商品・サービスだった」「業者と連絡が取れなくなった」として異議を申し立てる手続きです。認められると支払いが取り消されます。
申請期限はカード会社・ブランドによって異なりますが、一般的に支払いから60〜180日以内が目安のため、被害に気づいたら早急に動くことが重要です。
- ②決済代行業者への責任追及
副業商材の販売には、多くの場合、決済代行業者が介在しています。
決済代行業者には、加盟店(販売業者)を適切に管理する義務(割賦販売法第35条の16)があります。
悪質な業者に決済サービスを提供し続けた場合、この管理義務違反を根拠として損害賠償を請求できる可能性があります。
チャージバック申請と決済代行業者への申し立てを積み上げることには、返金を求めるだけでなく、業者の決済レーンそのものを遮断するという実務上の重要な効果があります。
決済代行業者はクレームが一定数積み上がると加盟店契約を解除する仕組みがあり、これが業者にとって最大のダメージになります。
分割払い・信販ローンが絡む場合は、割賦販売法に基づく抗弁権の接続も活用できます。
販売業者に対して主張できる取り消し・解除の事由を信販会社に対しても主張することで、残りのローン支払いの停止・既払い分の返金を求めることができます。
「ローンを組んでしまったから諦めるしかない」ということはありません。
銀行振込の場合
銀行振込にはクレジットカードのようなチャージバック制度がなく、一般的に返金が難しいとされています。
しかし、その理由と対策を正確に理解することが重要です。
組織的な副業詐欺の業者は、最初から「名義を飛ばす」ことを前提として動いています。
被害金を受け取る口座は、「道具屋」と呼ばれる裏方から仕入れた他人名義・法人名義の使い捨て口座です。
入金を確認すると即座に資金を別口座へ移動・分散させ、口座を「燃やす」運用をしています。
このため、「振込先の口座を特定して取り返す」という直線的なアプローチは機能しにくい構造になっています。
ではどうするか。有効なのは、業者が最も困ることを突く戦略です。
- ①振込先口座の凍結申請
振込先口座を金融機関・警察に申告することで、振り込め詐欺救済法に基づく口座凍結の申請ができます。
業者が次の被害金を受け取れなくなるため、決済レーンの遮断という意味で有効な手段です。
口座に残金がある場合は、被害回復分配金の支払い申請につながる可能性もあります。
- ②弁護士による交渉・法的手続き
業者の所在が判明している場合、弁護士による内容証明郵便での取り消し通知・任意交渉・法的手続き(支払督促・訴訟)を通じた回収を検討できます。
業者が表に出てこない場合でも、決済に関わった周辺業者(決済代行業者・アフィリエイター等)への責任追及という手段が残っている場合があります。
銀行振込の被害こそ、一人で動かず早期に弁護士へ相談することが、取れる手段を最大化するうえで最も重要です。
時間が経過するほど資金の追跡・業者の特定が困難になります。
弁護士からのアドバイス!
「銀行振込だから諦めるしかない」と考える必要はありません。
確かに、振込後すぐに資金が分散されてしまうケースは多く、直接的な回収が困難な場面があるのも事実です。しかし、副業詐欺業者には決済レーンの維持というウィークポイントがあります。
口座凍結の申請・決済代行業者への申し立てを迅速に積み重ねることで、業者が次の被害者から資金を受け取る手段を圧迫できます。「自分の被害を取り戻す」ことと「業者に圧力をかけて交渉を有利に進める」ことは、同時に進められます。
一人で「振込先に連絡してみよう」と動き出す前に、まず弁護士に現状を相談してください。動く順番と手段を誤ると、業者に逃げる時間を与えることになりかねません。
「返金不可」の契約条項は絶対ではない
副業詐欺の業者が返金拒否の根拠として真っ先に持ち出すのが、契約書・利用規約の「返金不可」条項です。
しかしこの条項は、法的に必ずしも有効ではありません。
消費者契約法10条は、消費者の権利を一方的に制限する契約条項は無効になり得ると定めています。
また消費者契約法による取り消しが認められた場合、契約自体が遡って無効となるため、「返金不可」という条項もあわせて無効になります。
「契約書に書いてある」という業者の主張は、法的な根拠として通用しない場合がほとんどです。
理解を深めたい
情報商材詐欺・副業詐欺の返金方法について、クーリングオフから法的手段まで詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

副業詐欺の相談先|警察・消費者センター・弁護士の使い分け
- 「被害に遭ったとわかったら、まず警察に行くべきか」
- 「消費者センターに電話すれば返金してもらえるのか」
副業詐欺の被害者が最初に抱く疑問の一つが、相談先の選び方です。
相談先を誤ると、時間を無駄にするだけでなく、業者に逃げる時間を与えてしまうことにもなりかねません。
このセクションでは、3つの相談先それぞれの役割・できること・限界を整理したうえで、「返金」という目的に最も適した選択肢を解説します。
3つの相談先の役割を整理する
まず、それぞれの機関の役割・できること・限界を一覧で確認しましょう。
| 警察 | 消費者センター | 弁護士 | |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 犯罪捜査・送検 | 相談受付・あっせん交渉 | 依頼者の利益最大化 |
| 費用 | 無料 | 無料 | 有料(着手金・成功報酬) |
| 返金交渉 | 行わない | 行う(担当者による) | 行う(法的根拠に基づき) |
| 法的手続き | 刑事手続きのみ | 行わない | 民事・刑事いずれも対応 |
| スピード | 遅い(捜査優先) | 中程度 | 依頼後すぐに動ける |
| 複数手段の並行実施 | できない | できない | できる |
警察への相談
警察は犯罪の捜査と送検を目的とする機関です。
副業詐欺で詐欺罪・特定商取引法違反が疑われる場合、被害届を提出することで捜査が始まる可能性があります。
ただし、返金という目的に照らしたとき、警察への相談にはいくつかの重要な留意点があります。
まず、被害額が小さいケースでは、捜査に至らない場合があります。
警察は被害が広域・大規模に積み重なった段階で動くことが多く、個別の被害に対してすぐに捜査が始まるわけではありません。被害届の受理自体を断られるケースもあり、弁護士が同行することで受理されやすくなる場合があります。
次に、より重要な点として、警察の目的はあくまで「捜査・送検」であり、被害金の回収ではありません。
さらに実務上の深刻な問題として、捜査の過程で業者の口座が凍結されると、その口座内の資金は被害者全員で分配される手続き(振り込め詐欺救済法)に移行します。
その結果、個別の返金交渉が実質的に難しくなる場合があります。
「業者を刑事的に追及したい」という目的であれば警察への相談は有効ですが、「お金を取り戻したい」という目的においては、警察への相談を最初の一手にすることは必ずしも最善ではありません。
消費者センターへの相談|無料で頼れるが、限界もある
消費者センター(各都道府県の消費生活センター・国民生活センター)は、業者への返金交渉のあっせんを無料で行ってくれる窓口です。
消費者ホットライン(局番なし188)から最寄りのセンターに繋がります。
費用がかからない点、公的機関である点から、最初の相談先として選ばれることが多く、消費者センターの介入によって業者が返金に応じるケースも実際にあります。
ただし、実務上の限界もあります。担当者のスキルや経験によって交渉力に大きなばらつきがあり、不慣れな担当者が交渉にあたった場合、法的に請求できる全額よりも大幅に低い「和解案」でまとまってしまうことがあります。
一度和解に合意すると残りの請求権を失う可能性があるため、注意が必要です。
また、消費者センターは法的手続き(訴訟・支払督促など)を行う権限を持っていません。
業者が交渉に応じない場合、打てる手が限られます。
弁護士への相談|「返金」という目的に最も特化できる理由
弁護士は、依頼者の目的に沿って法的手段を駆使して動ける唯一の存在です。
返金という目的においては、警察にも消費者センターにもできない動き方ができます。
副業詐欺の被害において、弁護士が実現できることは以下の通りです。
- 被害状況を整理し、使える法的根拠(消費者契約法・特定商取引法・民法など)を見極める
- 業者への内容証明郵便による解除・取消通知(法的に有効な意思表示)
- 業者との直接交渉(任意交渉)を法的根拠に基づいて有利に進める
- チャージバック申請・決済代行業者への責任追及の並行実施
- 口座凍結申請・警察への被害届同行などの並行実施
- 任意交渉が不調な場合の訴訟・支払督促などの法的手続き
特に副業詐欺において重要なのは、複数の手段を同時並行で素早く進められるという点です。
業者が逃げ切る前に、決済レーンの遮断・口座凍結・交渉を同時に動かすことで、返金の可能性を最大化できます。
一人の弁護士が「あなたの返金」という目的だけに特化して動ける。これが弁護士への相談が最善である本質的な理由です。
弁護士からのアドバイス!
「消費者センターに相談したら、弁護士には相談できない」ということはありません。
消費者センターへの相談と弁護士への相談は、並行して行うことができます。
ただし、消費者センターでの交渉が進んでいる場合、業者からの「和解案」が提示されることがあります。その金額が法的に請求できる全額を下回っていないか、和解に応じる前に必ず弁護士に確認することをお勧めします。
一度合意した和解を覆すことは非常に困難です。
副業詐欺における相談先の判断基準
3つの相談先の特徴を踏まえ、目的別の判断基準をまとめます。
- 「業者を刑事的に追及したい・社会的に制裁を与えたい」
- 警察への被害届提出を検討。ただし返金目的との両立には注意が必要なため、弁護士に相談のうえ判断する。
- 「まず無料で状況を相談したい・記録を残したい」
- 消費者センター(188)への相談は有効。ただし和解案への安易な合意は避け、弁護士への相談と並行させることを推奨。
- 「できる限り多くのお金を取り戻したい」
- 弁護士への相談が最も目的に合致する。初回無料相談を活用して、まず見立てを聞く。
理解を深めたい
警察・消費者センター・弁護士の違いについては、こちらの記事でもさらに詳しく解説しています。各相談先の実務的な違いについて、より詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

まとめ
この記事では、「副業詐欺」という言葉が指す2つの類型の整理から始まり、
情報商材型副業詐欺の5つの手口パターン、出会い系サイト変形型の「会話する副業」の実態、被害事例、被害後の初動対応、返金の法的根拠と決済手段別のアプローチ、そして相談先の選び方まで、一通りを解説してきました。
この記事を通じて、最も伝えたいことは一つです。
「副業で稼ごうとしていただけなのに」という気持ちは、返金を諦める理由にはならないということです。
副業詐欺の手口は、人が自然に抱く「生活を良くしたい」「現状を変えたい」という動機を体系的に利用するよう設計されています。
騙されたのではなく、騙されるように精巧に設計された状況に置かれた。
それが正確な理解です。
