
この記事の監修者
青山北町法律事務所 代表弁護士
松本 理平(まつもと りへい)
消費者詐欺分野で長年、詐欺業者と対峙をしてきました。消費者詐欺分野の類型や手口に精通しています。詐欺業者のウィークポイントや実態にも詳しく切り込みます。その他、全国ネットでのテレビなどコメンテーター等にてメディア露出多数
「これは詐欺ではないので、返金はお受けできません」
情報商材の返金を申し出たとき、業者からこう言われたことがある方は少なくありません。
そしてその言葉を受けて、「詐欺じゃないなら仕方ないのか」と諦めてしまっている方も多いのが実情です。
しかし、ここで一つ重要なことをお伝えしなければなりません。「詐欺かどうか」と「返金できるかどうか」は、法律上まったく別の問題です。
刑事上の「詐欺罪」が成立するためには、相手に「騙す意図(故意)」があったことを証明する必要があり、ハードルは非常に高くなります。しかし、詐欺罪が成立しない場合でも、消費者契約法・特定商取引法・民法といった民事上の法律によって返金を請求できるケースは多く存在します。
業者が「詐欺ではない」と主張することは、「返金しなくていい」という意味にはならないのです。
一方で、情報商材のすべてが違法・詐欺であるわけではありません。適切な説明のもとで販売された情報商材は、法的に問題のない取引です。
重要なのは、「その商材がどのように販売されたか」、つまり、勧誘・販売のプロセスに法的な問題があったかどうかという点です。
この記事では、情報商材が「違法になるケース」と「違法にならないケース」を、実際の裁判所の判断(判例)を交えながら解説します。
「自分が購入したものは詐欺なのか、詐欺じゃないのか」という疑問への答えと同時に、「詐欺でなくても返金を請求できる理由」を明確にします。
「詐欺とまでは言えないかもしれない」と感じている方こそ、この記事を最後まで読んでください。あなたのケースで返金を請求できる根拠が、「詐欺かどうか」以外のところに存在するかもしれません。
目次
そもそも「情報商材が詐欺になる」とはどういうことか
「詐欺」という言葉は日常的に広く使われますが、法律上の「詐欺」には明確な定義があります。
そしてその定義を正確に理解することが、「自分のケースで何が問題なのか」「どの法律が自分を守ってくれるのか」を判断するうえで、非常に重要な出発点になります。
刑事上の「詐欺罪」が成立する条件
刑法第246条が定める詐欺罪は、以下の要件がすべて揃ったときに成立します。
- ①欺罔行為(人を騙す行為)があること
- 相手方に対して、事実と異なる情報を意図的に伝えることです。「必ず月収100万円になります」という言葉が事実と異なり、かつそれを知りながら言っていた場合がこれにあたります。
- ②錯誤(被害者が誤解すること)
- 欺罔行為によって、被害者が事実と異なる認識を持った状態になることです。
- ③処分行為(被害者が財産を交付すること)
- 誤解した状態のまま、お金を支払うなど財産を処分する行為を行うことです。
- ④財産損害が生じること
- 被害者に財産上の損害が発生することです。
- ⑤故意があること
- 加害者側に、「騙して財産を取得しようとする意図」が最初からあったことです。
この5つの要件がすべて揃って初めて、刑事上の詐欺罪が成立します。
中でも「故意(騙す意図)の立証」が最も難しく、情報商材の販売において詐欺罪の刑事立件に至るケースが限られている最大の理由はここにあります。
「内容が薄かった」「思っていた商品と違った」という事実だけでは、詐欺罪の立証には不十分なことが多いのです。
法令解説
刑法第246条(詐欺)
刑法第246条は、詐欺罪について以下のように定めています。詐欺罪の成立には「人を欺く行為」と「それによる財物の交付」が必要であり、偶発的な虚偽ではなく意図的な欺罔行為であることが要件とされています。
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
刑法第246条
民事上の違法行為(消費者契約法・特定商取引法違反)との違い
刑事上の詐欺罪が成立しない場合でも、民事上の法律によって違法と判断され、返金を請求できるケースは広く存在します。この点が、多くの被害者が誤解している最も重要なポイントです。
民事上の違法行為において重要なのは、「騙す意図(故意)があったかどうか」ではなく、「勧誘・販売のプロセスに問題があったかどうか」という点です。
消費者契約法は、事業者が「断定的判断の提供」「不実告知」「困惑類型」などの問題ある勧誘を行った場合、消費者が契約を取り消せると定めています。これらの要件に「故意の証明」は必要ありません。
つまり、「騙そうとしていなかった」と業者が主張しても、勧誘のプロセスに問題があれば、消費者契約法による取り消しは認められ得ます。
特定商取引法は、誇大広告の禁止・書面交付義務・クーリングオフなどを定めており、これらに違反した場合も行政処分や民事上の責任が生じ得ます。
| 区分 | 詐欺罪(刑事) | 消費者契約法・特商法(民事) |
|---|---|---|
| 主な目的 | 犯罪者の処罰 | 消費者の保護・返金 |
| 故意の証明 | 必要 | 不要 |
| 立証のハードル | 高い | 相対的に低い |
| 結果 | 刑事罰(懲役・罰金) | 契約取消・損害賠償 |
| 被害者への直接的な返金 | 副次的 | 直接的な目的 |
「詐欺でない」≠「返金できない」という重要な事実
ここまでの解説を踏まえて、最も重要なことを改めて明確にします。
業者が「これは詐欺ではありません」と主張することは、法的には「刑事上の詐欺罪は成立しない(かもしれない)」という主張に過ぎません。それは「消費者契約法違反ではない」「特定商取引法違反ではない」「民法上の問題もない」という意味には、まったくなりません。
実務上、情報商材詐欺の多くは刑事上の詐欺罪としての立件が難しいケースでも、消費者契約法・特定商取引法・民法を根拠とした民事上の返金請求が認められているケースが多く存在します。
「詐欺じゃないから返金できない」
この業者の言葉は、法律的には根拠のある主張ではありません。返金を諦める理由にはならないのです。
情報商材が「違法」になる4つのケース
情報商材の販売が民事上・刑事上の問題となるのは、商材の内容そのものよりも、販売・勧誘のプロセスに問題があった場合がほとんどです。
「情報を売ること」自体は違法ではありません。問題は「どのように売ったか」です。
このセクションでは、情報商材の販売において法的に違法と判断されやすい4つのパターンを解説します。「自分が購入したときにこういう言葉があったか」を確認しながら読み進めてください。
①断定的判断の提供|必ず稼げる」という言葉の法的問題
消費者契約法第4条1項2号が禁じる「断定的判断の提供」は、情報商材の販売において最も頻繁に見られる違法類型です。
将来の収益は本質的に不確実なものであるにもかかわらず、それを確実であるかのように断言して契約させた場合、消費者はその契約を取り消すことができます。
以下のような言葉が使われていた場合、この類型に当てはまる可能性があります。
- 「必ず稼げます」「絶対に結果が出ます」
- 「このシステムを使えば確実に月収30万円を達成できます」
- 「私のクライアントで失敗した人は一人もいません」
- 「このツールは負けることがない仕組みになっています」
- 「再現性100%の手法です」「勝率90%超が統計的に証明されています」
重要なのは、実際に利益が出なかったかどうかに関わらず、断定的な表現で勧誘した事実だけで取り消しの根拠になり得るという点です。
「言ったかもしれないが、結果的に稼げた人もいる」という業者の反論は、この要件の成否に直接影響しません。
法令解説
消費者契約法第4条1項2号(断定的判断の提供)
消費者契約法第4条1項2号は、将来の不確実な事項について断定的判断を提供し、消費者がそれを確実と誤認して契約した場合に、取り消しを認める規定です。FX・投資ツール・副業商材など、将来の収益を訴求するあらゆる情報商材に適用し得ます。
消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。 当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認
消費者契約法第4条1項2号
不実告知|事実と異なる説明で契約させた場合
消費者契約法第4条1項1号が定める「不実告知」は、事業者が重要事項について事実と異なることを告げ、消費者がその内容を事実と誤認して契約した場合に、取り消しを認める規定です。
情報商材の販売における不実告知の典型的なパターンは以下の通りです。
- 実績・成功事例の虚偽
- 「この方法で月収100万円を達成した方が続出しています」という説明が、実際には根拠のない誇大表現だった場合。あるいは、提示された収益スクリーンショットが加工・改ざんされたものだった場合。
- 商品内容・機能の虚偽
- 「AIが24時間自動でトレードして利益を生み出すシステム」と説明されたが、実際にはそのようなシステムは存在しなかった場合。「業界初の独自アルゴリズム」と説明されたが、実態は既存の無料ツールの組み合わせに過ぎなかった場合。になることです。
- 販売者の属性・資格の虚偽
- 「元上場企業の役員が開発した手法」「著名な投資家が監修したプログラム」という説明が事実と異なっていた場合。著名人・有名人の名前を無断で使用した場合も、この類型に該当し得ます。行うことです。
- サービス内容の虚偽
- 「購入後も充実した個別サポートを提供します」「案件紹介まで一貫してサポートします」という約束が最初から履行される予定がなかった場合。
誇大広告|特定商取引法違反
特定商取引法第12条は、通信販売における誇大広告を禁止しています。「著しく事実に相違する表示」または「実際のものより著しく優良・有利であると誤認させる表示」が該当します。
インターネット広告・SNS投稿・YouTubeの広告動画などが特定商取引法上の通信販売に当てはまる場合、これらの媒体における誇大な表現も規制対象となります。
具体的には、以下のような表示が問題になりやすいケースです。
- 「参加者全員が月収30万円以上を達成」(根拠のない全員達成の表示)
- 「3ヶ月でかならず成果が出る」(根拠のない期間の断言)
- 「日本初・世界唯一のシステム」(根拠のない優位性の主張)
- 「著名人〇〇も愛用・推薦」(無断使用・虚偽の推薦)
特定商取引法違反が認められた場合、行政処分(業務停止命令など)の対象になるほか、民事上の損害賠償請求の根拠にもなり得ます。
法令解説
特定商取引法第12条(誇大広告等の禁止)
特定商取引法第12条は、通信販売における誇大広告を禁止し、事実に基づかない誇大な広告表示を規制しています。インターネット販売における誇大な実績表示・根拠のない効果の断言などがこれに該当し得ます。
販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、当該商品の性能又は当該権利若しくは当該役務の内容、当該商品若しくは当該権利の売買契約又は当該役務の役務提供契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(第十五条の三第一項ただし書に規定する特約がある場合には、その内容を含む。)その他の主務省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。
特定商取引法第12条
困惑類型|不安を煽るクロージングの法的問題
消費者契約法第4条3項が定める「困惑類型」は、事業者が消費者を困惑させる方法で契約させた場合に取り消しを認める規定です。
情報商材のクロージング場面で特に問題となるのが、「不安をあおる告知」です。消費者の生計・将来・キャリアなどに関する重大な不安をあおり、「このままでは解決しない」と告げて契約させる行為は、この類型に該当し得ます。
以下のような言葉が使われていた場合、困惑類型が当てはまる可能性があります。
- 「このままでは5年後も今と同じ生活が続きますよ」
- 「今決めない人は一生成功できません」
- 「このLINEを閉じたら二度とこの案内はできません」
- 「本気じゃないなら結構です(強い拒絶)」
- 「残り2名しか枠がありません。今日中に決めてください」
焦りや不安から冷静な判断ができない状態で決断させることが、この類型の本質的な問題です。
「自分で決めた」という感覚があっても、意図的に作り出された心理的プレッシャーのもとでの決断は、法的に「自由な意思による契約」とは見なされない場合があります。
情報商材が「違法」と判断されるのは、商材の内容の薄さよりも、販売・勧誘のプロセスに問題があった場合です。断定的判断の提供・不実告知・誇大広告・困惑類型——これらは「詐欺罪」が成立しない場合でも、消費者契約法・特定商取引法によって違法と判断され、返金請求の根拠になり得ます。
実際に除法商材が違法と認められた判例
「情報商材の販売が違法と認められるとはいっても、実際に裁判所でそのような判断が出るのか」と疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、情報商材をめぐる民事訴訟・刑事事件において、裁判所が違法性を認めた判例は現実に積み重ねられています。
このセクションでは、プロジェクト内に収録されている判例資料をもとに、実際の裁判所の判断を紹介します。
「こういう販売が実際に違法と認定された」という事実は、あなたのケースを評価するうえでの重要な参考になります。
【判例①】東京地裁令和元年7月3日判決|AI自動システム・投資DVDの断定的判断と誇大広告
- 事案の概要
株式会社ONE MESSAGEほかを被告とした損害賠償請求事件です。
被告会社は、インターネット広告・勧誘動画を通じて、
- 「AI(人工知能)によって自動的にお金を増やすことができるハイスピード自動AIシステム」
- 「3ヶ月で16億円を稼がせた秘密の手続き」
- 「日本人全員を億万長者にする」
- 「ビジネス初心者が続出中」
などと謳った投資DVD(商品名:〇〇〇〇〇〇〇)および関連する高額コース(「パルテノンコース」)を販売していました。複数の原告がこれらの広告を信じて商品を購入し、損害を被ったとして提訴しました。
- 裁判所の判断
裁判所は、以下の点から被告の行為を違法と認定しました。
まず広告については、「確実に多額の利益を得ることができる」との印象を与える表示は、実際のDVD商品の内容(投資家が購入するとおりに外国通貨取引に投資するというもの)と著しく相違するとして、特定商取引法第12条の誇大広告に該当すると判断しました。
次に勧誘動画については、「AIシステムによって自動的に多額の利益を得ることができる」との表示も商品の性能と著しく相違するとして、同様に誇大広告に該当すると認定しました。
さらに裁判所は、被告会社は消費者契約法違反の勧誘行為を行っていることを認識していたとして悪意の受益者であると判断し、民法704条・719条1項に基づく不法行為(共同不法行為)の成立を認め、損害賠償の支払いを命じました。
本件広告は、本件DVDという商品の性能について、著しく事実に相違する表示をするものと認められ、特商法12条において禁止されている誇大広告に該当する。……本件勧誘動画は、その広告内容が、……著しく事実に相違する表示をする広告であると認められ、特商法12条において禁止されている誇大広告に該当するものである。
出典:東京地裁令和元年7月3日判決
【判例②】旭川地裁令和4年|FX投資商材における断定的判断の提供
- 事案の概要
FX投資に関する情報商材・サービスの販売において、将来の収益について断定的な判断を提供したことが問題となった事案です。
業者側は「このシステムを使えば確実に利益が出る」「損失が出ることはない」といった趣旨の説明を行い、購入者がこれを信じてサービスを契約・購入しました。
- 裁判所の判断
裁判所は、FX取引という本質的に不確実性を伴う投資について、「確実に利益が出る」「損失は出ない」という趣旨の説明を行うことは、消費者契約法第4条1項2号が定める「断定的判断の提供」に該当すると判断しました。
この事案において重要なのは、実際に利益が出なかったという結果だけでなく、そのような断定的な説明をした事実そのものが取り消しの根拠になるという点が確認されたことです。
「言ったかどうか」という事実認定が焦点となりましたが、裁判所はLINEのトーク履歴や販売ページの内容を証拠として採用しました。
本件セールスレターは、被告会社のLINEやチャットワーク等に登録した不特定多数のものに対する宣伝広告であるものの、その記載内容全体から判断して…..消費者契約法4条1項所定の「勧誘」にあたる。本件各契約は同法….悪意となったものと認められる。
出典:旭川地裁令和6年判決
【判例③】決済代行業者の損害賠償責任を認めた事案
- 事案の概要
情報商材の販売業者に対してではなく、その決済を担っていた決済代行業者に対して損害賠償責任を追及した事案です。
情報商材詐欺の被害者が、悪質な販売業者に決済サービスを提供し続けた決済代行業者の「加盟店管理義務違反」を根拠として損害賠償を請求しました。
- 裁判所の判断
裁判所は、決済代行業者には割賦販売法に基づく加盟店管理義務があり、悪質な加盟店の存在を認識できる状況にありながら適切な対応を取らなかったとして、決済代行業者に対しても損害賠償責任が認められると判断しました。
この判例が持つ実務上の重要な意味は2点あります。
まず、業者本人が消えてしまった後でも、決済代行業者への請求という手段が残り得るという点。次に、決済代行業者へのクレームの積み上げが業者の営業停止につながるという実務上の戦略的価値が、判例によって裏付けられたという点です。
「被控訴人が行っていたという商材の審査は、形式的なものであって、誇大表現等の掲載を何ら阻止し得ない形骸化したものであったといわざるを得ないから、上記のような審査の実行をもって、被控訴人の故意過失を否定することはできず、むしろ、被控訴人は、その公表に係る売上高ランキングの上位者ないし「殿堂入り」と扱って…..控訴人を含む本件サイトの利用者がこれを購入しようとすることを認容していたと推認するのが相当であって…..被控訴人は、少なくとも民法719条2項所定の損害賠償責任を負う。
出典:さいたま地方裁判所令和5年7月判決
3つの判例から読み取れること
これら3つの判例を通じて、実務上重要な共通点が見えてきます。
「確実に稼げる」という表現は、それだけで違法になり得る
判例①・②に共通するのは、「確実に稼げる」「AIが自動で利益を生む」という表現が、実際の商品の性能・実態と乖離していたとして違法と認定された点です。「言った言わない」という問題になりますが、LINEトーク・販売ページ・広告動画が証拠として機能することが確認されています。
広告・勧誘動画も違法性の判断対象になる
販売ページだけでなく、SNS広告・YouTube動画・LINE上の勧誘メッセージも、特定商取引法・消費者契約法上の違法性の判断対象になります。「広告は誇張があるのが当たり前」という感覚は、法律上通用しません。
業者本人以外への責任追及も可能
判例③が示す通り、業者本人が消えてしまった後でも、決済代行業者への責任追及という手段が残り得ます。「業者と連絡が取れなくなった」という状況でも、すべての手段が閉じるわけではありません。
弁護士からのアドバイス!
これらの判例において、共通して重要な役割を果たしたのが証拠です。LINEトークのスクリーンショット・販売ページの保存・広告動画のURL——これらが「断定的な表現があった」「事実と異なる説明があった」を立証する証拠として機能しました。
判例は抽象的な法律の話ではなく、「このような証拠があれば、このような主張が認められる」という実務上の道筋を示しています。「自分のケースでも同じような証拠がある」と感じた方は、返金請求を検討する具体的な根拠があります。まず証拠を保全し、専門家に状況を確認してもらうことから始めてください。
情報商材が「違法にならない」ケース|合法と判断される条件
情報商材のすべてが違法・詐欺であるわけではありません。
適切な販売プロセスのもとで提供される情報商材は、法的に問題のない取引です。このセクションでは、情報商材の販売が合法と判断されるための条件を整理します。
「合法と違法の境界線はどこにあるのか」を知ることは、自分が購入した商材を振り返るうえで非常に役立ちます。
これから紹介する4つの条件を、ご自身の購入時の状況と照らし合わせながら読み進めてください。
- 「説明が違った」
- 「断定的な言葉で勧誘された」
- 「返品ポリシーの説明がなかった」
4つの条件のうち一つでも満たされていなかった場合、それは返金請求を検討できる根拠になり得ます。逆に言えば、この4つの条件がすべて揃っていた場合に限り、その取引は法的に問題のない販売だったと評価されやすくなります。
条件①事実に基づいた適切な説明がなされている
販売ページ・勧誘トーク・広告において、商品の内容・実績・効果について事実に基づいた正確な説明がなされていることが、合法な情報商材販売の大前提です。
具体的には、以下の点が求められます。
- 収益実績を示す場合、その数字が実際に達成されたものであり、根拠を示せること
- 「参加者の声」「成功事例」を掲載する場合、実際の体験に基づくものであること
- 商品の内容・機能について、実態と乖離した説明をしていないこと
- 販売者の肩書き・実績について、事実と異なる表示をしていないこと
「誇張が多少あるのは広告として当然」という認識は、法律上通用しません。特定商取引法第12条は「著しく事実に相違する表示」を禁じており、「著しく」の基準は一般的な感覚よりも厳格に解釈されます。
条件②将来の収益について断定的な表現がない
販売・勧誘において、将来の収益について「必ず」「確実に」「絶対に」という断定的な表現を使用していないことが必要です。
合法な情報商材の販売では、将来の収益について以下のような表現にとどめることが求められます。
- 合法な表現の例
- 「この方法を実践することで、収益を得られた方もいます」
- 「個人差はありますが、〇〇万円の収益を達成した方がいます」
- 「成果には個人差があります。必ずしも同じ結果が得られるとは限りません」
- 「参考実績:月収〇〇万円(※個人の実績であり、収益を保証するものではありません)」
- 違法になりやすい表現の例
- 「必ず月収〇〇万円を達成できます」
- 「このシステムを使えば確実に稼げます」
- 「再現性100%の手法です」
収益に関する免責事項・注記を適切に記載することは、合法な販売において不可欠な要素の一つです。
条件③クーリングオフ・返品ポリシーが適切に明示されている
特定商取引法は、取引類型に応じてクーリングオフの適用・返品特約の記載を義務付けています。
通信販売(インターネット販売)の場合、返品・キャンセルに関する特約を販売ページに明記することが求められています。「返金不可」という条件を設定すること自体は直ちに違法ではありませんが、その記載が特定商取引法の定める要件を満たしていない場合、法的に有効な特約として機能しない場合があります。
また、電話勧誘・セミナー・個別面談を経て契約した場合は、法定のクーリングオフ期間(8日間または20日間)が適用されます。
これを妨げる行為(「クーリングオフはできません」という虚偽の説明など)は、それ自体が特定商取引法違反となります。
条件④特定商取引法上の表記義務を満たしている
インターネットで情報商材を販売する事業者には、特定商取引法に基づく表記義務があります。販売ページ・サイト内に以下の情報を明記することが義務付けられています。
- 販売事業者の名称(法人名または氏名)
- 代表者または責任者の氏名
- 所在地(住所)
- 電話番号
- 販売価格(税込)
- 支払い方法・時期
- 商品の引渡し時期
- 返品・キャンセルに関する特約
これらの情報が記載されていない、または虚偽の情報が記載されている場合、特定商取引法違反となります。また、実際には存在しない住所・電話番号を記載していた場合は、悪質性が高く、消費者契約法上の不実告知の根拠にもなり得ます。
弁護士からのアドバイス!
「合法の条件を4つ確認したが、自分が購入した商材はいずれも満たしていなかった」と気づいた方へ。それは返金を請求できる根拠が存在する可能性を示しています。
一方で、「表面上は合法に見える」販売でも、実際の勧誘プロセスを確認すると問題が見つかるケースは実務上非常に多くあります。
「販売ページには適切な免責表記があった」「特商法の表記もあった」という状況でも、勧誘のLINEトークや個別面談で断定的な言葉があれば、消費者契約法上の問題は別途生じます。
「合法に見えるから返金できない」とは限りません。販売ページの見た目だけで判断せず、勧誘プロセス全体を専門家に確認してもらうことをお勧めします。
グレーゾーンの判断が難しいケース|「詐欺かどうかわからない」場合
- 「明らかな詐欺とまでは言えないけれど、なんかおかしい」
- 「騙す意図があったかどうかわからない」
- 「話が違う気はするが、詐欺と断言できるほどではない」
情報商材をめぐるトラブルの多くは、実はこのグレーゾーンに位置しています。
「詐欺かどうかわからない」という状況が、返金を諦める理由として機能してしまっているケースが実務上非常に多く見られます。しかし「そもそも「情報商材が詐欺になる」とはどういうことか」で解説した通り、民事上の返金請求に「詐欺の証明」は必要ありません。
このセクションでは、判断が難しいグレーゾーンのケースを整理し、それでも返金請求ができる理由を解説します。
「騙す意図がなかった」と主張する販売者のケース
近年増加しているのが、「自分自身も信じていた」「騙すつもりはなかった」と主張する個人販売者によるトラブルです。
SNSの普及により、従来の組織的な詐欺業者とは異なる個人販売者層が生まれました。
「自分自身も被害者から成功者になった」というストーリーを持ち、「この方法で自分は稼げたから、人にも教えたい」という動機で情報商材を販売しているケースがあります。
このような販売者は「騙そうとしていなかった」という点で、刑事上の詐欺罪の故意立証が困難なグレーゾーンで活動しています。しかし、「騙す意図がなかった」ということは、消費者契約法上の違法行為がなかったことを意味しません。
「必ず稼げます」「再現性100%です」という断定的な表現を使っていた場合、その販売者に「騙そうとした意図」があったかどうかに関わらず、消費者契約法上の「断定的判断の提供」は成立し得ます。「悪意はなかった」という主張は、消費者契約法による取り消しを妨げる理由にはならないのです。
内容が薄くても「詐欺とまでは言えない」場合
- 「買ってみたら内容が薄かった」
- 「ネットで調べれば無料で手に入る情報だった」
このような状況は、厳密には「詐欺罪」の成立要件を満たさない場合があります。「内容が薄い情報を販売すること」自体は、直ちに刑事上の詐欺罪にはなりません。
しかし、ここで重要な問いが生まれます。
購入前の説明と、実際に届いた商材の内容は一致していたでしょうか。
- 「具体的な稼ぎ方を教える」と説明されていたのに届いたのがマインドセット論だった。
- 「AIシステムが自動で収益を生む」と説明されていたのに実態はChatGPTの使い方解説だった。
- 「個別コンサルを週1回行う」と約束されていたのに一度も実施されなかった。
これらは「詐欺とまでは言えない」かもしれませんが、民法上の「債務不履行」(約束した内容が履行されていない)の根拠になり得ます。
「内容が薄い」という感覚的な不満を、「説明内容と実態が乖離していた」という法的な主張に変換できるかどうかが、このケースでの返金請求の鍵になります。
「詐欺的な雰囲気はあったが、証拠がない」場合
- 「なんとなく怪しいとは思っていた」
- 「焦らされた気はする」
- 「断定的な言葉があった気がする」
しかし、具体的な証拠が手元にない。このような状況も、グレーゾーンの典型的なパターンです。
消費者契約法による取り消しを主張するためには、「断定的な表現があった」「不安を煽る言葉があった」という事実を示す必要があります。
証拠がまったくない状態では、主張の立証が困難になります。
しかし、「証拠がない」と思っている方でも、実際に整理してみると思わぬ証拠が残っているケースは実務上少なくありません。
- 購入前の販売ページがまだ存在している(今すぐスクリーンショットを)
- LINEトークが削除されていない
- メールの受信履歴に勧誘内容が残っている
- クレジットカードの明細から業者名が特定できる
- セミナーの案内メール・資料が手元にある
「証拠がないから無理だ」と判断するのは、専門家に整理してもらった後でも遅くありません。
グレーゾーンでも民事上の返金請求ができる理由
「詐欺かどうかわからない」「グレーゾーンだと思う」という状況で、それでも民事上の返金請求が認められやすい理由を改めて整理します。
【理由①】消費者契約法は「故意」を要件としない
「そもそも「情報商材が詐欺になる」とはどういうことか」で解説した通り、消費者契約法による取り消しは「騙す意図があったかどうか」を問いません。
- 断定的な表現
- 事実と異なる説明
- 不安を煽るクロージング
これらの事実があれば、販売者の主観的な意図に関わらず取り消しが認められ得ます。
【理由②】「詐欺と断言できない」≠「問題のある販売ではなかった」
「詐欺とまでは言えない」という状況は、多くの場合「消費者契約法上の問題もなかった」という意味ではありません。刑事上の詐欺罪の成立要件と、民事上の消費者契約法違反の成立要件は異なります。刑事では問題にならなくても、民事では問題になるケースは広く存在します。
【理由③】複数の根拠を組み合わせられる
一つの根拠だけでは弱い場合でも、消費者契約法・債務不履行・不法行為・割賦販売法など複数の根拠を組み合わせることで、返金請求の説得力を高めることができます。
「一つの根拠だけでは無理かもしれない」という状況でも、他の根拠が残っている場合があります。
「詐欺かどうかわからない」「騙す意図があったかどうかわからない」という状況は、返金を諦める理由にはなりません。民事上の返金請求において重要なのは詐欺の証明ではなく、勧誘・販売プロセスに消費者契約法・特定商取引法上の問題があったかどうかです。グレーゾーンであっても、専門家に整理してもらうことで返金の可能性が見えてくる場合があります。
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〜「詐欺って言い切れないから相談しにくい」と感じているあなたへ〜
「はっきり詐欺とも言えないし、自分も悪かったかもしれない。
そんな状況で相談していいのかな」と思っている方がいます。その気持ち、よくわかります。
でも、「詐欺かどうかわからない」という段階こそ、専門家に整理してもらうことが最も価値のある場面です。
「詐欺と断言してから相談する」必要はまったくありません。
「なんかおかしい」という感覚を持ったまま、まず話してみてください。
「詐欺じゃないから返金できない」は本当か|業者の主張を法的に検証する
返金を申し出たとき、業者からさまざまな言葉が返ってきます。
その多くは「もっともらしく聞こえるが、法的には根拠がない」主張です。業者の言葉をそのまま受け入れて諦めてしまうことが、最も避けてほしい結果です。
このセクションでは、業者が返金拒否の際に使う典型的な言葉を取り上げ、それぞれに対する法的な反論を整理します。
「業者にこう言われた」という方は、対応する反論を確認してください。
業者が使う返金拒否の言葉と法的な反論
- 「これは詐欺ではないので返金できません」
これがこの記事全体を通じて最も伝えたかった点です。「詐欺ではない」という主張は、「消費者契約法違反でもない」「特定商取引法違反でもない」「民法上の問題もない」という意味にはまったくなりません。
「そもそも「情報商材が詐欺になる」とはどういうことか」で解説した通り、刑事上の詐欺罪と民事上の消費者契約法違反は、成立要件がまったく異なります。詐欺罪が成立しなくても、断定的な表現・不実告知・誇大広告・困惑類型が認められれば、消費者契約法による取り消しと返金請求は可能です。
- 「契約書に返金不可と書いてあります」
契約書や利用規約の「返金不可」条項が法的に有効かどうかは、別途検討が必要です。
消費者契約法第10条は、消費者の権利を一方的に制限する契約条項は無効になり得ると定めています。また、消費者契約法による取り消しが認められた場合、契約自体が遡って無効になるため、「返金不可」条項もあわせて無効になります。
「契約書に書いてある」という事実は、返金請求を遮断する法的根拠にはなりません。
- 「お客様が自分の意志で決済ボタンを押しました」
購入者が自らの判断で決済したという事実は、消費者契約法上の取り消しを妨げません。
消費者契約法は、「自らの判断で契約した」という状況であっても、その判断が断定的な表現・不実告知・不安を煽る言葉によって歪められていた場合に、取り消しを認めています。
「自分で押した」という事実は、「自由な意思による契約だった」という証明にはなりません。
- 「クーリングオフの期間は過ぎています」
クーリングオフの期間が過ぎていても、消費者契約法による取り消しという別の手段が残っています。
消費者契約法の取り消し権の行使期間は、追認できる時から1年・契約から5年です。「クーリングオフが使えない」という事実は、「すべての返金手段が使えない」という意味ではありません。
- 「情報の価値はあなたが判断するものです」
「情報商材は情報を売るものだから、その価値は主観的なものであり、内容が薄いと感じても返金の理由にならない」という趣旨の主張です。
しかし、購入前の説明内容と実際に届いた商材の内容が大きく乖離していた場合、「情報の価値が主観的」という論理は通用しません。
約束された内容が履行されていない事実は、民法上の債務不履行として客観的に評価されます。
- 「販売会社はすでに存在しません」
業者が廃業・消滅したことを理由に返金を拒否するパターンです。しかし、業者本人が消えても返金の手段がすべて閉じるわけではありません。
クレジットカード払いであればチャージバック申請・決済代行業者への責任追及が残っています。
ローン払いであれば割賦販売法の抗弁権の接続が使えます。
業者が消えた後でも、専門家には別の入口が見えている場合があります。
法令解説
消費者契約法第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
消費者契約法第10条は、消費者の権利を制限し、または義務を加重する契約条項のうち、民法の基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効と定めています。「返金不可」条項がこれに該当すると判断される場合、その条項は法的な効力を持ちません。
消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
消費者契約法第10条
「詐欺でなくても」返金を請求できる法的根拠を整理
改めて、詐欺罪が成立しない場合でも活用できる返金の法的根拠を一覧で整理します。
| 根拠 | 要件の概要 | 詐欺罪との違い |
|---|---|---|
| 消費者契約法による取り消し | 断定的判断の提供・不実告知・困惑類型のいずれかがあること | 故意(騙す意図)の証明不要 |
| 特定商取引法違反 | 誇大広告・書面交付義務違反・クーリングオフ妨害など | 行政処分と民事上の請求が可能 |
| 債務不履行(民法415条) | 約束した内容が履行されなかったこと | 悪意・故意の証明不要 |
| 詐欺取消し(民法96条) | 欺罔行為があったこと | 刑事詐欺罪よりハードルが低い |
| 不法行為(民法709条) | 故意または過失による権利侵害と損害 | 過失でも成立し得る |
| 割賦販売法(抗弁権の接続) | ローン・分割払いが絡む場合 | 信販会社への支払い停止が可能 |
自分のケースで返金できるかを確認する方法
「自分のケースにどの根拠が当てはまるか」は、被害の状況・決済手段・証拠の内容によって異なります。一人で判断しようとすると見落としが生じやすく、「使えたはずの根拠に気づかなかった」という事態につながりかねません。
最も確実な確認方法は、専門家に現状を整理してもらうことです。
初回相談では以下の情報を準備しておくと、より正確な見立てを得ることができます。
- 購入に至った経緯(SNS・LINE・セミナーなど)
- 勧誘の際に使われた言葉(「必ず稼げる」「今決めないと」など)
- 支払い方法と金額
- 実際に届いた商材の内容
- 業者との現在の連絡状況
- 手元に残っている証拠の種類
理解を深めたい
相談先の選び方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

まとめ
この記事では、情報商材が「違法になるケース」と「違法にならないケース」を、実際の判例を交えながら解説してきました。「詐欺かどうか」という問いに対する答えと同時に、「詐欺でなくても返金を請求できる理由」を明確にすることがこの記事の目的でした。
改めて最も重要なことをお伝えします。「詐欺かどうか」と「返金できるかどうか」は、法律上まったく別の問題です。
業者が「これは詐欺ではない」と主張することは、法的には「刑事上の詐欺罪は成立しないかもしれない」という主張に過ぎません。消費者契約法・特定商取引法・民法による民事上の返金請求が認められるかどうかとは、まったく別の話です。
そして実際の判例が示す通り、情報商材の販売において
- 「断定的な表現があった」
- 「事実と異なる説明があった」
- 「誇大な広告表示があった」
という事実は、裁判所によって違法と認定されてきています。
- 「詐欺と断言できない」
- 「グレーゾーンだと思う」
- 「自分も悪かったかもしれない」
そうした気持ちから、一人で抱え込み続けている方へ。
その「なんかおかしい」という感覚は、法的に整理すれば「断定的判断の提供があった」「説明内容と実態が乖離していた」という正当な主張に変わり得るものです。
返金を諦める前に、一度専門家に現状を話してみてください。「詐欺と断言できなくても相談していい」と悩まれている方こそ、相談することで整理がつきます。
相談したからといって、すぐに依頼しなければならないわけではありません。「自分のケースで何ができるか」を確認するだけでも、次の一歩が見えてきます。
