
この記事の監修者
青山北町法律事務所 代表弁護士
松本 理平(まつもと りへい)
消費者詐欺分野で長年、詐欺業者と対峙をしてきました。消費者詐欺分野の類型や手口に精通しています。詐欺業者のウィークポイントや実態にも詳しく切り込みます。その他、全国ネットでのテレビなどコメンテーター等にてメディア露出多数
- 「情報商材詐欺は実際に違法なのか」
- 「業者は逮捕されることがあるのか」
- 「どの法律に違反したことになるのか」
情報商材をめぐるトラブルに遭った方が次に抱く疑問の一つが、法律上の評価です。
結論から言えば、情報商材詐欺は複数の法律に違反し得る行為であり、悪質なケースでは実際に逮捕・起訴・有罪判決に至っています。
名古屋地方裁判所令和3年12月2日判決では、バイナリーオプション取引の情報商材を販売した被告人2名に対して、詐欺罪・特定商取引法違反による有罪判決が下されています。
情報商材詐欺が「逮捕される犯罪」であることは、実際の判決によって示されています。
一方で、情報商材詐欺に関わる法律は一つではありません。
刑法(詐欺罪)・特定商取引法・消費者契約法という3つの法律が、それぞれ異なる要件・異なる効果を持って機能します。
- 「刑事罰を受ける可能性があるかどうか」
- 「行政処分の対象になるかどうか」
- 「民事上の返金請求ができるかどうか」
これらは法律によって異なり、場合によっては複数が同時に問題になります。
この記事では、情報商材詐欺に関わる3つの法律の適用条件と実際の帰結を、実際の刑事事件例・民事判例を交えて体系的に解説します。
「自分のケースはどの法律に当てはまるのか」「業者に対してどのような手段が取れるのか」
そうした疑問への答えが、この記事にあります。
「業者を法的に追及したい」「どの法律を根拠に戦えばいいか知りたい」という方はもちろん、「自分の被害が法律上どう評価されるのか」という段階の方にも、この記事が判断の材料になれば幸いです。
目次
情報商材詐欺に関わる法律の全体像
情報商材詐欺に関わる法律の話になると、「詐欺罪」「特定商取引法」「消費者契約法」という言葉が飛び交い、「結局どれが自分のケースに当てはまるのかわからない」という混乱が生じやすくなります。
このセクションでは、まず全体の地図を示します。3つの法律がそれぞれ何を目的としていて、どのような効果をもたらすのかを整理することで、以降の各セクションの解説が理解しやすくなります。
3つの法律と3つの法的効果
情報商材詐欺に関わる主な法律は以下の3つです。
それぞれが「誰を守るために」「何を禁じ」「違反するとどうなるか」という点で異なります。
| 法律 | 主な目的 | 禁じる行為 | 違反した場合の効果 |
|---|---|---|---|
| 刑法(詐欺罪・246条) | 財産犯の処罰 | 人を欺いて財物を交付させること | 刑事罰(懲役・罰金)・逮捕 |
| 特定商取引法 | 消費者取引の公正化 | 誇大広告・不実告知・書面不交付など | 行政処分(業務停止命令)+刑事罰 |
| 消費者契約法 | 情報格差の補正・消費者保護 | 断定的判断の提供・不実告知・困惑類型など | 民事上の契約取消・損害賠償 |
この3つは、それぞれが独立して機能します。
- 「詐欺罪が成立しなくても特商法違反になる場合」
- 「特商法違反が認定されなくても消費者契約法で取り消せる場合」
- 「3つすべてが問題になる場合」
状況によって、どの法律が問題になるかは異なります。
刑事責任・行政処分・民事責任はどう違うのか
3つの法律に対応する法的効果を、被害者の視点から整理します。
【刑事責任】業者が「処罰される」効果
刑法上の詐欺罪が成立した場合、業者は逮捕・起訴・有罪判決という刑事手続きの対象になります。
被害者にとっての直接的なメリットは、業者が社会的に制裁を受けることです。
ただし、刑事手続きは「被害者のお金を取り戻すこと」を主目的としていないため、刑事責任の追及だけでは返金に直結しないことに注意が必要です。
【行政処分】業者の「営業を止める」効果
特定商取引法違反が認定された場合、消費者庁・都道府県が業務停止命令・業務改善命令を発出することがあります。
これは業者の営業そのものを止める効果を持ちます。被害者への直接的な返金につながるわけではありませんが、同様の被害の拡大を防ぐという意味で重要です。
また特商法には刑事罰の規定もあり、悪質なケースでは刑事責任と並行して問われます。
【民事責任】被害者が「お金を取り戻す」効果
消費者契約法・民法に基づく民事上の請求は、被害者が直接「お金を取り戻す」ことを目的とした手続きです。
契約の取り消し・損害賠償請求によって、支払った金額の返還を求めることができます。
刑事責任・行政処分と異なり、被害者自身が主体となって動く手続きであり、弁護士への依頼が最も有効に機能する領域です。
情報商材詐欺には、刑法・特定商取引法・消費者契約法という3つの法律が関わります。刑事責任(業者の処罰)・行政処分(業者の営業停止)・民事責任(被害者への返金)という3つの効果はそれぞれ独立しており、「詐欺罪が成立しない=法的に問題がない」という理解は誤りです。被害者が「お金を取り戻す」という目的においては、民事上の手続きが最も直接的に機能します。
詐欺罪(刑法246条)と刑事責任が生じる条件
「情報商材詐欺で業者は逮捕されるのか」
この疑問を持つ方は多いですが、刑事上の詐欺罪が成立するためには、具体的な要件を満たす必要があります。
情報商材詐欺においては、この要件の充足が難しいケースも多く、「詐欺罪での立件は困難だが、民事上の返金請求は可能」という状況が生まれます。
このセクションでは、詐欺罪の成立要件と、情報商材詐欺で詐欺罪が認定されやすい状況・されにくい状況を整理します。
詐欺罪の5つの成立要件
刑法第246条が定める詐欺罪は、以下の5つの要件がすべて揃ったときに成立します。
- 【①欺罔行為】人を「欺く」行為があること
相手方に対して、意図的に事実と異なる情報を伝えることです。
「真実ではないとわかっていながら告げる」という点が重要であり、単なる誤りや誇張とは区別されます。
情報商材詐欺では、
- 「自分のバイナリーオプション取引で2時間に12万円以上の利益を得た」
- 「このシステムを使えば勝率80%以上になる」
といった、実際には存在しない実績・機能について事実であるかのように告げる行為がこれに当たります。
- 【②錯誤】被害者が「誤解する」こと
欺罔行為によって、被害者が事実と異なる認識を持った状態になることです。
「このシステムは本当に高勝率なのだ」「この人は実際に大きな利益を得ているのだ」という誤解が生じていることが必要です。
- 【③処分行為】被害者が「財産を交付する」こと
誤解した状態のまま、被害者がお金を支払うなど財産を処分する行為を行うことです。
「信じて100万円を支払った」という事実がこれに当たります。
- 【④財産損害】「損害が生じる」こと
被害者に財産上の損害が発生することです。
支払った対価に見合う商品・サービスが提供されなかった場合に認められます。
- 【⑤故意】「騙す意図」が最初からあること
加害者側に、「騙して財産を取得しようとする意図」が最初から存在していたことです。
この「故意の証明」が、情報商材詐欺において詐欺罪が問われる際の最大のハードルです。
法令解説
刑法第246条(詐欺罪)
刑法第246条は詐欺罪を定めており、成立した場合は10年以下の拘禁刑(旧・懲役刑)に処せられます。詐欺罪の成立には単なる虚偽の表示だけでなく、「人を欺く意図(故意)」と「それによる財物の交付」という要件が必要です。
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
消費者契約法第四条3項
情報商材詐欺で詐欺罪が認定されやすい状況
詐欺罪の5つの要件のうち、特に「故意(騙す意図)」の存在が認定されやすい状況があります。
以下のような状況では、詐欺罪の立件可能性が高まります。
- 実在しない実績・機能を「事実」として告げていた場合
後述する名古屋地裁令和3年判決では、「2時間で12万6800円の利益を得た」という被告人の実績が事実無根であり、「そのような利益を得ることができる方法論が存在しない」にもかかわらず、これを事実として告げていたことが詐欺罪の欺罔行為として認定されました。
- 「最初から騙す目的で設計された」組織的・計画的な販売
架空のトレーダーを演じるという行為・組織的な役割分担・出会い系アプリを使った接触から始まる段階的な誘導。これらの計画性・組織性が、「最初から騙す意図があった」という故意の認定を強固にします。
- 被害者が支払った金額に対して、提供されるものがまったく存在しない場合
「投資指導サービスとして100万円を受け取ったが、実際に提供できる指導内容がまったく存在しなかった」というケースは、財産損害と欺罔行為の対応関係が明確になり、詐欺罪の成立が認定されやすくなります。
「故意の証明」が壁になるケース
一方で、情報商材詐欺において詐欺罪の立件が困難になりやすい状況があります。
- 「自分も信じていた」と主張できる販売者のケース
「自分自身も被害者から成功者になった経験があり、本当に稼げると信じていた」という販売者は、「騙す意図(故意)」の立証が困難になります。
商材の内容が薄くても、「自分では価値があると思っていた」という主張が成立し得る場合、詐欺罪の故意認定が難しくなります。
- 誇大表現はあったが「実績ゼロ」とまでは言えないケース
「月収30万円を達成した人が何人かいるのは事実だが、全員が達成できるかのような表現をした」というケースでは、欺罔行為の「事実と異なること」の程度の問題になり、詐欺罪の立証が複雑になります。
- 個人販売者で組織性・計画性が証明しにくいケース
組織的・計画的な詐欺と異なり、個人が情報商材を販売しているケースでは、「最初から騙す目的で設計した」という計画性の証明が難しく、故意の認定ハードルが上がります。
弁護士からのアドバイス!
「詐欺罪での逮捕・立件が難しいケースでも、被害者は泣き寝入りするしかないのか」
答えは「いいえ」です。
詐欺罪の刑事立件が難しいケースは、多くの場合「消費者契約法上の問題がある」「特定商取引法に違反している」という状況と重なります。刑事責任の追及と民事上の返金請求は、まったく別の手続きです。
「詐欺罪にはならないかもしれない」という状況でも、民事上の返金請求は十分に可能なケースが多くあります。
「刑事告訴できるかどうか」の判断と「返金請求できるかどうか」の判断を混同しないことが重要です。刑事と民事を切り分けて、それぞれの可能性を専門家に確認してもらうことをお勧めします。
特定商取引法違反と行政処分・刑事罰の対象となる条件
特定商取引法(以下「特商法」)は、消費者取引における不公正な行為を規制する法律で、情報商材の販売においても広く適用されます。
詐欺罪の「故意の証明」という高いハードルとは異なり、特商法は行為の事実さえ認定されれば違反が成立するという点で、より広く適用されやすい法律です。
このセクションでは、情報商材の販売において特商法違反が問われる具体的な行為と、その結果として何が起きるかを解説します。
【特商法が禁じる行為】情報商材販売に関わる主な規定
特商法は、通信販売・電話勧誘販売・訪問販売・連鎖販売取引など、取引類型ごとに異なる規制を定めています。
情報商材の販売に関わる主な規定は以下の通りです。
| 規定 | 内容 | 違反の典型例 |
|---|---|---|
| 誇大広告の禁止(12条) | 著しく事実に相違する表示・実際より優良と誤認させる表示の禁止 | 「月収30万円確実」「勝率90%超が統計的に証明済み」 |
| 不実告知の禁止(21条等) | 重要事項について事実と異なることを告げることの禁止 | 「AIシステムが自動で収益を生む」(存在しない機能の告知) |
| 書面交付義務(5条・18条等) | 契約締結時に法定事項を記載した書面を交付する義務 | 書面を交付しない・法定記載事項が欠けている |
| クーリングオフ妨害の禁止(9条の3等) | クーリングオフの行使を妨害することの禁止 | 「この取引はクーリングオフできません」という虚偽の説明 |
| 特商法表記義務(11条等) | 販売事業者の名称・所在地・電話番号等の明示義務 | 表記なし・虚偽の住所・架空の電話番号 |
誇大広告の禁止(特商法12条)に違反した場合どうなるのか?
特商法第12条が禁じる誇大広告は、情報商材の販売において最も多く問題となる規定です。
「著しく事実に相違する表示」または「実際のものより著しく優良・有利であると誤認させる表示」が該当します。
- 行政処分(業務停止命令・業務改善命令)
- 消費者庁または都道府県知事が、違反業者に対して業務停止命令(最長2年)または業務改善命令を発出することができます。命令に違反した場合はさらに重い刑事罰の対象になります。
- 刑事罰
- 特商法第72条は、誇大広告等の違反行為に対して、3年以下の懲役または300万円以下の罰金(またはその併科)を定めています。法人に対しては最高3億円以下の罰金が科される場合があります。
法令解説
特定商取引法第12条(誇大広告等の禁止)・第72条(罰則)
特商法第12条は通信販売における誇大広告を禁止し、第72条はその違反行為に対する刑事罰を定めています。「著しく」の基準は、一般消費者が当該表示から受ける印象・認識を基準に判断されます。
販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、当該商品の性能又は当該権利若しくは当該役務の内容、当該商品若しくは当該権利の売買契約又は当該役務の役務提供契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(第十五条の三第一項ただし書に規定する特約がある場合には、その内容を含む。)その他の主務省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。
特定商取引法第12条
書面交付義務違反・クーリングオフ妨害と刑事罰の対象となるケース
特商法の中でも、情報商材の刑事事件化において特に重要な規定が、書面交付義務違反とクーリングオフ妨害です。
書面交付義務違反(特商法5条・18条等)
電話勧誘販売・訪問販売・特定継続的役務提供に該当する取引では、契約締結時に法定事項を記載した書面を消費者に交付する義務があります。
この書面が交付されないまま契約させた場合、特商法違反となります。
名古屋地裁令和3年判決では、自己啓発サービスの契約に際してクーリングオフに関する書面を交付しなかった行為が、詐欺罪と並んで特商法違反として認定されました。
クーリングオフ妨害
- 「この取引はクーリングオフの対象外です」
- 「クーリングオフはできません」
という虚偽の説明でクーリングオフを妨害した場合、特商法違反となり刑事罰の対象になります。
業者がクーリングオフを妨害した事実があれば、クーリングオフの期間がリセットされ、改めて書面を受け取った日から起算し直されることになります。
行政処分(業務停止命令)の実際
消費者庁は、特商法違反が認定された業者に対して業務停止命令を定期的に公表しています。
情報商材・副業商材の販売業者に対する業務停止命令の事例は近年増加傾向にあり、以下のような行為が処分の根拠となるケースが多く見られます。
- 「必ず稼げる」「確実に収益が出る」という断定的な収益表示(誇大広告)
- 実在しない利用者の声・成功実績の掲載(不実告知)
- 特商法表記(事業者名・住所・電話番号等)の不記載または虚偽記載
- クーリングオフに関する書面の不交付
消費者庁の業務停止命令は公式サイトで公表されるため、取引前に業者名を検索することで、処分歴の有無を確認することができます。
押さえておこう!
「業者に行政処分が出た。でも私のお金は?」
業者への行政処分のニュースを見て、「やっぱり詐欺だったんだ」と確信しながらも、「でも私のお金は戻ってこないのかな」と感じている方がいます。その不安、よくわかります。
行政処分は業者の営業を止めることが目的であり、被害者への直接の返金には結びつきません。でも、行政処分が出たという事実は、「この業者の販売行為は違法だった」という公的な認定を意味します。その事実は、民事上の返金請求においても重要な根拠になります。諦めずに、専門家に相談してみてください。
消費者契約法違反と民事責任が生じる条件
刑法(詐欺罪)と特定商取引法が「業者を処罰・制裁する」ための法律であるのに対し、消費者契約法は「被害者がお金を取り戻す」ことに最も直接的につながる法律です。
消費者契約法による取り消しの最大の特徴は、「故意の証明が不要」という点です。
業者が「騙す意図はなかった」と主張しても、勧誘のプロセスに問題があれば取り消しが認められ得ます。情報商材詐欺の被害者が返金を求める際に最も広く活用できる根拠であり、この法律を正確に理解することが、返金への最短ルートになります。
不実告知(消費者契約法4条1項1号)
消費者契約法第4条1項1号が定める「不実告知」は、事業者が重要事項について事実と異なることを告げ、消費者がその内容を事実と誤認して契約した場合に、取り消しを認める規定です。
「重要事項」とは、消費者が契約を締結するかどうかの判断に影響を与える事項を指します。
情報商材の販売における不実告知に該当し得る典型的な告知は以下の通りです。
- 「この方法を実践した受講生が続々と月収100万円を達成しています」(根拠のない実績の告知)
- 「AIシステムが24時間自動でトレードして収益を生み出します」(存在しない機能の告知)
- 「私のクライアントで失敗した人は一人もいません」(虚偽の成功率の告知)
- 「案件紹介まで一貫してサポートします」(履行する意思・能力がない約束)
- 「著名な投資家が監修した実績ある手法です」(虚偽の権威・監修の告知)
不実告知が認められるためには、「告げられた内容が事実と異なること」と「その告知によって誤認して契約したこと」の2点が必要です。
購入前の販売ページ・LINEトーク・セミナーでの説明内容と、実際に届いた商材の内容を比較したとき、「話が違う」と感じる部分があれば、この根拠が当てはまる可能性があります。
断定的判断の提供(消費者契約法4条1項2号)
消費者契約法第4条1項2号が定める「断定的判断の提供」は、将来の不確実な収益について確実であるかのように断言して契約させた場合に、取り消しを認める規定です。
FX・投資ツール・副業商材など、将来の収益を訴求するあらゆる情報商材に適用し得る、最も重要な規定の一つです。
以下のような言葉が使われていた場合、この規定が当てはまる可能性があります。
- 「必ず稼げます」「絶対に結果が出ます」「確実に利益が出ます」
- 「3ヶ月で月収10万円は確実に達成できます」
- 「このシステムは負けることがない仕組みになっています」
- 「勝率90%超が統計的に証明されています」
- 「再現性100%の手法です」
この規定において特に重要なのは、実際に利益が出なかったかどうかに関わらず、断定的な表現で勧誘した事実だけで取り消しの根拠になるという点です。「言ったかもしれないが、一部の人は実際に稼げた」という業者の反論は、この要件の成否に直接影響しません。
困惑類型(消費者契約法4条3項)
消費者契約法第4条3項が定める「困惑類型」は、事業者が消費者を困惑させる方法で契約させた場合に、取り消しを認める規定です。
情報商材のクロージング場面で最も多く見られる違反類型の一つです。
情報商材詐欺において特に問題となるのが、「不安をあおる告知」(同条第3項第8号)です。消費者の生計・将来・キャリアなどに関する重大な不安をあおり、「このままでは解決しない」と告げることによって契約させる行為がこれに該当します。
以下のような言葉が使われていた場合、この類型に当てはまる可能性があります。
- 「このままでは5年後も今と同じ生活が続きますよ」
- 「副業を始めないと、将来的に生活が苦しくなります」
- 「今決めない人は一生成功できません」
- 「このLINEを閉じたら二度とこの案内はできません」
- 「残り2名です。今日中にお返事をいただけますか」
「焦って決めた」「断れない雰囲気だった」という感覚がある方は、この類型に当てはまる可能性があります。「自分で決めた」という感覚があっても、意図的に作り出された心理的プレッシャーのもとでの決断は、法的に「自由な意思による契約」とは見なされない場合があります。
法令解説
消費者契約法第4条(意思表示の取消し)
消費者契約法第4条は、事業者による不当な勧誘行為によって消費者が誤認または困惑した場合に、その意思表示を取り消すことができると定めています。情報商材詐欺における返金請求で最も広く活用される根拠であり、故意の証明を必要としない点が詐欺罪との最大の違いです。
消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一 重要事項について事実と異なることを告げること。
二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価値、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。
消費者契約法第四条
取り消しが認められた場合に何が起きるか
消費者契約法による取り消しが認められると、以下の法的効果が生じます。
- 契約の遡及的無効
契約が最初から無効だったものとして扱われます。
これにより、「返金不可」条項を含む契約書の内容もあわせて無効になります。業者が「契約書に返金不可と書いてある」と主張しても、契約自体が取り消された場合はその主張が通りません。
- 原状回復義務
双方が受け取ったものを返還する義務が生じます。業者は受け取った代金を返還し、購入者は受け取った商材(デジタルコンテンツの場合はアクセス権の返還など)を返還することになります。
- 取り消しができる期間
取り消し権を行使できる期間は、追認できる時(誤認・困惑に気づいた時)から1年、契約時から5年です。「被害から時間が経ってしまった」という方も、気づいた時点から1年以内であれば、取り消し権を行使できる可能性があります。
実際に刑事事件化・行政処分となった事例
「情報商材詐欺が実際に刑事事件になるのか」という疑問を持つ方は多いですが、答えは明確に「はい」です。
情報商材・投資商材をめぐる詐欺罪・特定商取引法違反での刑事事件化は現実に起きており、裁判所による有罪判決も下されています。
ここでは、実際の判例をもとに、実際に刑事事件化・違法と認定された事案を解説します。
「自分が遭ったのと似た手口が、実際に違法と認定されている」という事実は、返金請求を進めるうえでの重要な根拠になります。
【刑事事件例】バイナリーオプション情報商材・詐欺罪+特商法違反
刑事判例の一例として、名古屋地裁令和3年判決のバイナリーオプション取引に関する投資指導商材の販売をめぐる刑事事件があります。
被告人A・Bの2名は、C組織に所属し、出会い系アプリ・SNSを使って20代前半の若者に接触したうえで、架空のトレーダー「F」を演じながら投資指導サービスを1件あたり100万円で販売しました。
欺罔行為の内容は?何が「虚偽」だったか
判決が認定した欺罔行為の核心は以下の通りです。
被告人Aは、自身のバイナリーオプション取引において「2時間で12万6800円の利益を得た」という実績を示しながら被害者を勧誘しましたが、この実績は事実無根でした。また「40万円を投資したら30秒で38万円の利益を得た」という取引動画を見せましたが、このような取引の裏付けとなるバイナリーオプション取引の勝率を80%以上に上げることができる方法論は存在しませんでした。
さらに被告人Bは、被害者らに対してホテルのロビーラウンジ等で面談し、「素人がやると50パー50パーなんですけど、どれだけ50パーを80パーセントとか90パーセントに増やせるか。それは知識とか経験で勝てるものなんですよ」「僕たちは、一律で100でやっているんですよ」などと述べ、現金100万円で同方法論を購入すれば同支出を超える利益を得られるものと誤信させました。
特商法違反の内容
本件では詐欺罪に加えて、自己啓発サービスの契約に際してクーリングオフに関する書面を交付しなかった特定商取引法違反(特商法71条1号・5条1項1号・6条2項・1項5号)も認定されています。
法定の除外事由がないにもかかわらず、書面の交付なしに高額で契約させた点が、詐欺罪と並ぶ別罪として処罰の対象となりました。
判決の結果
裁判所は被告人A・Bに対して以下の判決を下しています。
- 被告人A:懲役1年6月(執行猶予4年)
- 被告人B:懲役2年(執行猶予4年)
適用法条は、詐欺罪(刑法60条・246条1項)および特商法違反(特商法70条1号・71条1号等)です。
量刑の理由として裁判所が示した重要な判断
裁判所は量刑の理由において、「本件は計画的かつ組織的なものであり、全体として相当悪質といわなければならない」と明言しました。
被告人A・Bの起訴分だけで被害総額は合計約600万円(被告人Aの起訴分約250万円・被告人Bの起訴分約350万円)に上るとしたうえで、「本件詐欺の実行行為を含む重要な役割を果たした」として刑事責任は軽視できないと判断しています。
被告人Aを懲役1年6月に、被告人Bを懲役2年に処する。被告人両名に対し、この裁判確定の日から4年間、それぞれその刑の執行を猶予する。
名古屋地方裁判所令和3年12月2日刑事第4部判決
【民事判例】AI自動システム・投資DVDの誇大広告と不法行為
次は民事判例の一例を見ていきましょう。
株式会社ONE MESSAGEほかを被告とした民事上の損害賠償請求事件です。
被告会社は、
- 「AIによって自動的にお金を増やすことができるハイスピード自動AIシステム」
- 「3ヶ月で16億円を稼がせた秘密の手続き」
- 「日本初公開の最新テクノロジーを利用した18歳の高校生から90歳のおじいちゃんまで日給3万〜30万円の不労所得を手に入れたビジネス初心者が続出中」
などと謳った投資DVD(本件商品)を販売していました。
裁判所の判断は?何が違法と認定されたか
裁判所は、本件広告について以下の点から特商法12条の誇大広告に該当すると認定しました。
本件DVDの内容は、確実に多額の利益を得ることができる方法が紹介されているわけではなく、本件DVDを購入することによって初めて購入することができる「パルテノンコース」という本件システムも、単に投資家が購入するとおりに外国通貨取引に投資するというものに過ぎませんでした。それにもかかわらず、「確実に多額の利益を得ることができる」との印象を与える広告表示をしていたことが、著しく事実に相違する表示と判断されました。
さらに裁判所は、被告会社は消費者契約法違反の勧誘行為を行っていることを認識していたとして悪意の受益者(民法704条)であると判断し、共同不法行為(民法719条1項)の成立を認め、損害賠償の支払いを命じました。
この判例が示す重要なポイント
この判例は、以下の2点において実務上極めて重要な意味を持ちます。
まず、広告・勧誘動画の内容が誇大広告として特商法違反と認定されたという点です。販売ページだけでなく、YouTube等の動画広告も違法性の判断対象になることが示されています。
次に、民事上の不法行為責任(損害賠償)が認められたという点です。刑事事件として立件されなくても、民事上の請求によって被害者が損害賠償を受けられることが判例として示されています。
本件広告は、本件DVDという商品の性能について、著しく事実に相違する表示をするものと認められ、特商法12条において禁止されている誇大広告に該当する。
東京地裁令和元年7月3日判決
2つの事例から読み取れる共通点
刑事事件(名古屋地裁令和3年)と民事判例(東京地裁令和元年)を通じて、実務上重要な共通点が見えてきます。
「存在しない実績・機能」の告知が核心的な違法行為
両事案に共通するのは、「実際には存在しない実績・機能を事実として告げた」という点です。
刑事事件では「存在しない勝率向上方法論」、民事判例では「実際には機能しないAIシステム」——いずれも「商品の内容・性能について著しく事実と異なる説明があった」という点で違法性が認定されています。
「確実に稼げる」という表現は、刑事・民事いずれの場面でも問題になる
「確実に利益が出る」「必ず稼げる」という断定的な表現は、刑事事件では詐欺罪の欺罔行為、民事判例では誇大広告・断定的判断の提供として問題になっています。
この種の表現が使われていたかどうかが、法的評価の分岐点になります。
証拠が決定的な役割を果たす
両事案において、LINEトーク・取引動画・広告内容・販売ページといった証拠が法的判断の基礎となっています。
「言った言わない」という問題を証拠によって解決できるかどうかが、事件化・返金請求の成否を左右します。
弁護士からのアドバイス!
「自分のケースも似たような状況だが、事件化されるほどのことなのか」と感じている方へ。
刑事事件化の可否と、民事上の返金請求の可否は別問題です。名古屋地裁令和3年の事案は刑事事件として立件されましたが、すべての情報商材被害が刑事事件になるわけではありません。しかし、東京地裁令和元年の判例が示す通り、刑事事件にならなくても民事上の損害賠償・返金請求は十分に認められ得ます。
「事件化するほどではないかもしれない」という理由で返金を諦める必要はありません。証拠を保全し、専門家に状況を確認してもらうことが、最初にすべき行動です。
刑事・行政・民事で「自分のケース」は何が使える?
ここまで、情報商材詐欺に関わる3つの法律(刑法・特商法・消費者契約法)と実際の事件事例を解説してきました。
このセクションでは、「自分のケースでは何を主張できるのか」という実用的な視点から、刑事・行政・民事それぞれの手段の使い分けと組み合わせ方を整理します。
- 「返金が目的なのか」
- 「業者を処罰してほしいのか」
- 「社会的に制裁を与えたいのか」
目的によって、取るべき手段は変わります。
そしてこれらの手段は、状況に応じて同時並行で進めることができます。
刑事告訴・被害届が有効なケース
刑事上の手続き(警察への被害届・告訴)が特に有効なケースは以下の通りです。
架空の実績・存在しない機能を「事実として」告げていた場合
名古屋地裁令和3年12月判決で認定されたように、「存在しない勝率向上方法論」「架空の取引実績」を事実として告げていた場合、詐欺罪の欺罔行為としての立件可能性があります。
「言ったことが事実と完全に異なる」という証明がしやすいケースで、被害届が受理されやすくなります。
組織的・計画的な販売が疑われる場合
架空のトレーダーを演じる・役割分担のある組織的勧誘・複数の被害者を対象とした計画的な販売。
このような状況は、「最初から騙す意図があった」という故意の認定を強固にし、刑事立件の可能性を高めます。
被害額が大きい・被害者が複数いる場合
警察は個別の少額被害に対して動きにくい傾向がありますが、被害が広域・大規模に積み重なっている案件では捜査に入る可能性が高まります。
「他にも被害者がいるかもしれない」という状況を伝えることが、被害届受理の一助になる場合があります。
【注意点】刑事手続きと返金目的の両立
ただし、警察捜査で口座が凍結されると個別の返金交渉が困難になる場合があります。
「業者を処罰したい」という目的と「お金を取り戻したい」という目的を同時に追う場合は、弁護士と戦略を相談したうえで警察への対応方針を決めることをお勧めします。
行政への申告(消費者庁・都道府県)が有効なケース
消費者庁や都道府県の消費者行政窓口への申告が特に有効なケースは以下の通りです。
誇大広告・不実告知が販売ページや広告に明示されていた場合
「必ず稼げます」「月収100万円達成者続出」という表示が販売ページ・SNS広告に残っている場合、特商法12条の誇大広告として行政に申告できます。
消費者庁は複数の申告が積み重なると調査・行政処分の対象とする傾向があります。
同様の被害を受けた人が複数いると思われる場合
行政処分は個別の被害救済を目的としませんが、多数の被害者からの申告が積み重なることで調査が始まりやすくなります。
消費者庁の電子申請フォームや消費者ホットライン(188)への申告は、被害の記録を残すという意味でも有益です。
行政処分歴の確認
行政に申告するだけでなく、消費者庁の公式サイトで業者への行政処分歴を確認することも重要です。
すでに業務停止命令を受けている業者であれば、その事実が民事上の返金請求においても「違法性の認定」を裏付ける証拠になります。
民事上の返金請求が有効なケース
「お金を取り戻す」という目的において最も直接的に機能するのが、民事上の返金請求です。以下のいずれかに当てはまる場合、民事上の請求の根拠が存在します。
消費者契約法による取り消し(最も広く使える根拠)
「必ず稼げると言われた」「話が違った」「焦らされて決めた」——H2④で解説した3つの類型(断定的判断の提供・不実告知・困惑類型)のいずれかに当てはまれば、故意の証明なしに取り消しが主張できます。取り消し権の行使期間は追認できる時から1年・契約から5年です。
特商法違反を根拠とした民事請求
特商法違反が認定された場合、その違反行為を根拠に民事上の損害賠償請求も可能です。行政処分歴がある業者であれば、処分の事実が違法性の証明を助けます。
債務不履行(約束した内容が履行されなかった場合)
「案件紹介まで保証する」「個別コンサルを行う」という約束が履行されなかった場合、民法415条の債務不履行を根拠にした返金請求が可能です。
決済手段別の追加手段
クレジットカード払いであればチャージバック申請・決済代行業者への責任追及、ローン払いであれば割賦販売法の抗弁権の接続、銀行振込であれば口座凍結申請など決済手段に応じた追加手段を組み合わせることで、返金の可能性を最大化できます。
複数の手段を組み合わせる戦略
刑事・行政・民事の各手段は、それぞれ独立して機能しますが、適切に組み合わせることで最大の効果を発揮します。
| 目的 | 優先すべき手段 | 組み合わせ |
|---|---|---|
| お金を取り戻したい | 民事(消費者契約法・チャージバック等) | 弁護士への早期相談 |
| 業者を処罰したい | 刑事(被害届・告訴) | 弁護士同行で受理率向上 |
| 同様の被害を防ぎたい | 行政(消費者庁申告) | 民事請求と並行実施可 |
| 業者の営業を止めたい | 行政+決済代行業者への申し立て | 決済レーンの遮断 |
特に「お金を取り戻したい」という目的においては、民事上の手続きを最優先に動かしながら、必要に応じて刑事・行政の手段を組み合わせるという順番が最も合理的です。
警察や消費者センターへの相談を最初の一手にすることで、業者に逃げる時間を与えてしまうリスクがあることも念頭に置いてください。
理解を深めたい
情報商材詐欺の返金方法と法的根拠について、クーリングオフから法的手段まで詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

相談先の選び方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

まとめ
この記事では、情報商材詐欺に関わる3つの法律
- 刑法(詐欺罪)
- 特定商取引法
- 消費者契約法
の適用条件と実際の帰結を、名古屋地裁令和3年判決・東京地裁令和元年判決という実際の事件例を交えて体系的に解説してきました。
この記事を通じて最も伝えたかったことは2つです。
1つ目は、情報商材詐欺は「実際に逮捕・有罪判決に至る犯罪」であるという事実です。名古屋地裁令和3年判決は、バイナリーオプション投資商材の販売において詐欺罪・特商法違反による有罪判決が下された実際の刑事事件です。
「情報商材詐欺が逮捕される犯罪かどうか」という問いへの答えは、判決によって明確に示されています。
2つ目は、「詐欺罪が成立しなくても、消費者契約法による返金請求は可能」という事実です。東京地裁令和元年判決が示すように、刑事事件として立件されなくても、誇大広告・断定的判断の提供・不実告知を根拠とした民事上の損害賠償・返金請求は認められ得ます。「刑事事件にならないから返金できない」という理解は誤りです。
この記事のポイントをまとめると、以下の通りです。
- 情報商材詐欺には刑法・特商法・消費者契約法という3つの法律が関わり、それぞれ刑事責任・行政処分・民事責任という異なる効果をもたらす
- 詐欺罪(刑法246条)の成立には「故意(騙す意図)」の証明が必要であり、架空の実績・存在しない機能を事実として告げていた場合に認定されやすい
- 特商法は誇大広告・書面不交付・クーリングオフ妨害などを禁じており、違反した場合は行政処分(業務停止命令)と刑事罰の対象になる
- 消費者契約法による取り消しは「故意の証明が不要」であり、断定的判断の提供・不実告知・困惑類型のいずれかに当てはまれば返金を請求できる可能性がある
- 名古屋地裁令和3年判決では、架空の実績・存在しない方法論を事実として告げた詐欺罪と書面不交付の特商法違反が認定され、組織的・計画的な犯行として有罪判決が下された
- 東京地裁令和元年判決では、AIシステム・投資DVDの誇大広告が特商法12条違反と認定され、民事上の不法行為責任(損害賠償)が認められた
- 刑事・行政・民事の各手段は独立して機能し、状況に応じて組み合わせることで最大の効果を発揮する
- 「お金を取り戻す」という目的においては、民事上の手続きを最優先に動かすことが最も直接的に機能する
この記事で解説した法律と判例が「自分の状況と似ている」と感じたなら、それは返金を検討し始めるべきサインです。
しかし、「自分のケースでどの法律が使えるか」「どの手段を優先すべきか」という具体的な判断は、被害の状況・決済手段・証拠の内容によって異なり、専門家なしに正確な判断は難しいのが実情です。
「詐欺罪にはならないかもしれない」「民事で戦えるかどうかわからない」という段階でも、まず弁護士に状況を整理してもらうことで、取れる手段の全体像が見えてきます。
これらは、消費者契約法とも連動して「契約の取り消し」を主張する最大の武器になります。
③【書面交付義務の違反(第18条)】契約書を正しく渡していますか?
業者は、契約を結んだ際に「法律で定められた項目(運営者情報、解約方法、クーリングオフの規定など)」が記載された書面を交付する義務があります。
- PDFですら送られてこない、またはLINEのメッセージだけで済まされている。
- 送られてきた規約に、会社名や住所、電話番号が正しく記載されていない。
この書面交付義務に違反している場合、クーリングオフの期間(通常8日間)がいつまでも始まらないとみなされ、数ヶ月後であっても無条件解約を突きつけられる可能性があります。
消費者を守る最強のルール「消費者契約法」
「詐欺罪(刑法)」が犯人を刑務所に入れるための法律だとしたら、「消費者契約法(民事法)」は、あなたのお金を守り、不当な契約を白紙に戻すための法律です。
この法律は、事業者と消費者の間にある圧倒的な知識・交渉力の格差を考慮して作られているため、契約書に「返金不可」と書かれていても、それを上書きして「契約取消」を勝ち取るための強力な盾となります。
特に情報商材被害で重要となる、3つの取り消しルールを深掘りします。
①【断定的判断の提供】未来への保証という名の違法行為
情報商材業者が最も頻繁に犯す違反が、この「断定的判断の提供」です。
本来、ビジネスや投資に「絶対」はあり得ません。
それにもかかわらず、「このツールを使えば月収50万円は確定です」「1円も損をすることはありません」といった、将来の不確実な利益を「確実だ」と断定して勧誘する行為は、消費者契約法第4条で厳格に禁じられています。
たとえ小さな文字で「※成果を保証するものではありません」という注釈がページの下部にあったとしても、勧誘の電話やLINEのやり取りで「絶対に稼げる」というニュアンスの発言があれば、その契約は取り消しの対象となります。
業者は「期待させただけだ」と弁解しますが、法的には「不確実なことを断定して判断を誤らせた」という事実だけで、あなたの取り消し権は正当に認められます。
②【不当な勧誘(困惑)】逃げ場を奪う「心理的監禁」
最近の被害事例で目立つのが、電話や対面での強引なクロージングによる「困惑」です。
これを法的には「不退去」や「退去妨害」と呼びます。
例えば、Zoomや電話での説明会において、「今は持ち合わせがないから家族と相談したい」「一度電話を切って考えたい」とはっきり伝えているにもかかわらず、「今決められない人は一生成功しません」「なぜ今決断できないのか説明してください」と数時間にわたって拘束し続けるようなケースです。
あなたが「この場を終わらせるには、契約するしかない」という心理的なパニック状態(困惑)に陥ってサインをした場合、その契約は自由な意思に基づかないものとして、後から取り消すことができます。
③【不当条項の無効】業者が勝手に決めたルールの無力化
業者が盾にする「いかなる理由があっても返金には応じない」「本契約に関する一切の損害賠償を免責する」といった規約(不当条項)は、消費者契約法第8条〜10条によって「無効」にできる可能性が極めて高いです。
消費者の利益を一方的に害するような条項や、事業者の責任をすべて免除するような規定は、たとえあなたが同意してハンコを押していたとしても、法的には認められません。
業者が「規約に書いてあるから無理だ」と突っぱねてくるのは、単なるブラフ(脅し)に過ぎません。
法律が認める正当な権利を使えば、そうした身勝手なルールはあっけなく崩れ去ります。
行政処分と刑事罰|違法性が認められた業者が辿る末路
情報商材詐欺の疑いがある業者に対して下される制裁には、大きく分けて「行政処分」と「刑事罰」の2種類があります。
どちらも業者にとっては致命的なダメージとなり、この事実が明るみに出ることは、被害者にとって返金を勝ち取るための「決定打」になり得ます。
業務停止命令
特定商取引法などに違反した業者に対し、消費者庁や都道府県が下すのが「行政処分」です。
特に強力なのが「業務停止命令」です。これは、一定期間(数ヶ月から長い場合は2年近く)、新たな勧誘活動や契約締結を一切禁止するものです。
近年の傾向として、SNS広告や動画サイトを巧みに利用した誇大広告への監視は非常に厳しくなっています。
一度「業務停止」が公表されれば、業者の名前は消費者庁の公式サイトに掲載され、インターネット上に半永久的に残ります。
そうなれば、クレジットカードの決済代行会社からも即座に契約を解除され、銀行口座の維持も困難になります。
彼らにとって行政処分は、実質的な「倒産宣告」に近い重みを持ちます。返金交渉中に「これだけの特商法違反があるのだから、消費者庁に通報する」という事実を突きつけることが、彼らを震え上がらせる最大の理由がここにあります。
摘発と逮捕
「詐欺罪」の壁は高いと前述しましたが、決して不可能ではありません。
警察が組織的な詐欺グループと断定し、家宅捜索(いわゆるガサ入れ)を経て逮捕に至るケースも、近年の捜査当局の積極的な姿勢によって確実に増えています。
最近の摘発事例では、単に「稼げなかった」という点だけでなく、組織的に「サクラ」を使ってSNSで偽の成功実績を投稿させたり、消費者金融から借金させるための「嘘の申告マニュアル」を共有していたりと、悪質性が極めて高いグループがターゲットになっています。
一度刑事事件として動き出せば、業者は自らの量刑を軽くするために、被害者に対して「示談」を申し出てくることがあります。
このタイミングでの示談金(返金)は、通常の交渉よりも高い割合で回収できる可能性を秘めています。
社会的信用と「口座」の喪失
法的な罰則以上に業者を追い詰めるのが、実社会からの排除です。
違法な勧誘を行っていることが銀行に知れ渡れば、いわゆる「反社会的勢力」やそれに準ずる存在とみなされ、法人口座が凍結・解約されます。
現代のビジネスにおいて口座を失うことは、決済機能の完全な停止を意味します。
業者は自分たちが「無敵」であるかのように振る舞いますが、実際には法的な包囲網によって常に薄氷を踏む思いで活動しています。
あなたが「違法性を指摘し、公的な窓口に相談する」という正当なアクションを起こすことは、彼らが最も恐れる「ドミノ倒し」の最初の一枚を倒す行為なのです。
まとめ
情報商材業者の非を鳴らし、正当な権利を取り戻すために心に留めておくべきは、以下の3点です。
- 「詐欺罪」に固執しすぎない
- 刑法での立件はハードルが高いですが、それは「勝てない」という意味ではありません。
警察が動かない場合でも、民事の視点で戦えば道は開けます。 - 特商法という「網」で違反を捉える
誇大広告や不実告知、書面の不備など、業者が守るべきルールを破っていないかをチェックしてください。
一つでも違反があれば、それは返金交渉における強力なカードになります。
- 消費者契約法という「盾」で守る
「絶対に稼げる」という断定的な言葉や、強引な勧誘によって結ばされた契約は、法律の力で白紙に戻せます。
規約の「返金不可」は、この盾の前では無力です。
法律を知ることは、あなたを自分を責める「後悔」から解放し、業者に対して毅然とした態度で「NO」を突きつけるための勇気を与えてくれます。
あなたが感じた違和感は、法的に整理すれば、お金を取り戻すための最強の根拠になるのです。
